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うみねこのなく頃に 考察 境界より視やる

PCゲーム「うみねこのなく頃に」の個人的な考察ブログ。「キコニアのなく頃に」についてもガッツリやっている。


EP3の序盤を再読

 ベアトの幼い頃の回想。

「……そうですね。魔法は、殺めたり、壊したりすることの方がとても簡単です。ゆえに、誘惑に負ける弱き魔女たちは、容易に身に付けられる力に酔い、本当の魔法の修行を怠ってしまいます。」
「……本当の魔法とは、直す力、蘇らせる力。散ってしまった幸せを呼び戻し、冷めてしまった愛をも呼び戻す。そして微笑を忘れてしまった姫様の顔に、笑顔を呼び戻せるのですよ。」

「壊れても壊れても、何度でも何度でも直せる…?」
「えぇ。その境地に達した時、無限の魔力が備わるでしょう。それこそが、魔女の達するべき無限の境地。私たちはその魔女を、最大の敬いをもってこう呼びます。」
「無限の魔女…。」

 1986年の惨劇は、殺めたり壊したりする簡単なもの。
 だから修行して、直す力、蘇らせる力を得ようとしたのが執筆者。
 八城が、失われた愛、ヤスを蘇らせるための物語。





 前回のゲームについて。

「さぁ、戦人くん。さっきの続きよ? マスターキーで朱志香ちゃんの部屋を施錠した後、どうやって室内の死体のポケットに鍵を戻したというの?」

 これはヒント。
 “使用人が犯人”以外だった場合、もっと言えば“19人目”が犯人だった場合、どうするのかという。






 絵羽の中のもう一人の絵羽についての記述から抜粋。

“囁き掛けてきたのは、………そう誓った日に私の心の中に生まれた、あの少女の日の私だった。”
“…そう。“彼女”は、私の唯一の味方だった。”
“私が辛い時、挫けそうな時、いつもそっと現れて私に味方してくれた。”
“難問に躓き、頭を抱えた時には必ず現れて応援してくれた。”
“私が成長し、少女時代を忘れるに従い、私は“彼女”との対話を次第に忘れていった…。”

 これは19人目の心の内にヤスが誕生した経緯のヒント。

“悲しみに沈み、何の為に生きるのかわからないくなったあの日、…あなたは私の内より現れて、私に力を貸してくれたわ。”
“…それは思い出すだけで苦々しい日々。”
“私の心に入った、傷の裂け目…。”
“その傷の縫い方を、“彼女”は教えてくれた…。”
“怒りを、努力に換えて自分を磨き、……兄よりも当主に相応しい人間になって、それをお父様に認めさせることで見返そうという、最高の形の復讐。”
「そうすれば私たちの心の傷は癒えるの。……その日までがんばろうって、誓い合ったわ。」

 19人目は“人間”だと認められない。
 その悲しみから生まれたのがヤス。
 そのヤスを、六軒島にいる“人間”よりも立派な“人間”にすることで、“みんな”よりも“人間”に相応しいと認めさせることで見返してやろうという、最高の形の復讐。
 そうすれば心の傷は癒えると信じ、その日まで頑張ろうと誓い合った。

 ……たぶん、正確には、
ヤス「私も人間になる努力をする。だからあなたも人間になる努力をしよう。そしていつかどちらもその願いが叶うと良いね」
 みたいな感じ。

「え、…えぇ。本気よ。……少女時代からの決意を捨てるのは、確かにとても悲しいこと。…私の少女時代そのものであるあなたを裏切るのは、私も心苦しいわ。……でも、それが一番現実的なのよ…!」
“その瞬快、自分の体があの頃の私ではなく、今の私…「妻」と「母」のそれへと変わる。”
“そう、……これは「夢」。それでも、あの頃と同じ野心と意欲を持ち続けている「彼女」は、その変化に対してあからさまに不機嫌な表情を浮かべて言い募った。”
「夢を捨てるの? ……そして、私も捨てるの?」

 あの頃の姿ではなく、今の姿である“八城”になった。
 そして「彼女」は言う。
「夢を捨てるの? ……そして、私も捨てるの?」
 …と。





 砂浜での戦人の台詞。

「みんな、案外、6年も前のことなんか覚えてるもんだな。俺なんか、かなり記憶があやふやだってのによ。」

 1998年の時点であの日から12年経っている。
 記憶もあやふやになっていることだろう。


「つがいってのは、互いが互いを認め合う以外に何の許可も要りやしない。」

 それだけで良かったのに、それ以上を願ってしまったのだ。





 砂浜でのいとこたちと紗音の会話。

「…そうだな。朱志香の言う通りだぜ。俺たちはいつまでも仲良しでいようぜ。」
「うー! 真里亞も一緒! みんな仲良し!!」
「そうだね。うん。僕たちはいつだってみんな一緒だよ。みんな仲良しだよ。」
「へへ。私たち、何、恥ずかしいこと言い合ってんだろうな。何だか照れちまうぜ。」
「でも、とても大切なことだと思いますよ。人は願わねば、いつまでも一緒にいることどころか、仲良くいることさえ難しい生き物なのですから。」
「そうだね。みんなが仲良くいられることを、決して当たり前のことだと思ってはいけないね。」
「うー。知り合いの魔女が言ってた。幸せは、みんなが信じなくちゃ叶わないんだって。」
「確かにね。信じる力には魔法が宿るかもしれない。それを全員が信じたなら、きっと幸せを運んできてくれるだろうね。」
「よし。なら恥ずかしいことついでだ。私たちはみんなで信じ合うと誓おうぜ? みんないつまでも仲良しで、いつまでも幸せでいようって。」
「おう! 俺たちはみんないつまでも仲良しで幸せだ。そしてみんなで信じようぜ。」
“俺たちはこんなにも青春し、旧交を温めあっているんだ。そして、みんながみんな、幸せになれると信じ合ってる。”
“だから…、何もおかしなことは起こらず、平和に幸せに、穏やかに、今日と明日が終わって欲しい…。”
“いや、…終わって欲しいじゃない。……終わってくれ……!”
「終わるかよぉぉおおおおぉおッ?」

 その「みんな」に含まれない者がいる。
 その遠くからの視線に「みんな」気付かない。
 幸せは「みんな」が信じなくちゃ叶わない。
 逆を言えば、「誰か」ひとりでも信じなければ叶わない。
 ならば惨劇は必然だっただろうさ。

 “全員が信じたら叶う”は「ひぐらし」だったか。
 なら「うみねこ」の構図は、“オヤシロ様を仲間外れにした「ひぐらし」”と言ったところか。
 目に“視えない”からと、そこに存在する者を敬わない。
 そこに確かに存在するのなら、これほど腹立たしいことはないだろう。
 いつ惨劇を起こされてもおかしくなかった。
 だからきっと、これまでに惨劇が起こらなかったことを感謝すべきだったのだ。

 目に見えない存在を敬い感謝する、とは確か「真相解明読本」のEP2にあった追加Tips「親愛なる魔女見習いへ。~魔法について~」にあったか。
 まあいい。

 「ひぐらし」の“全員が信じたら奇跡は起きる”に対して、「うみねこ」は“全員が信じたら奇跡は起きない”。
 “全員”というが、それが“全員”だと証明できるのか?
 それは悪魔の証明。
 “全員”だと決めつけて、結果ひとりぼっちになった者が出てきたらどうするのか?
 これは「ひぐらし」に対するアンチテーゼ。

 全員が信じることで、それは真実となる。
 なら、それとは異なる真実はどうなる?
 そんな儚い小さな真実を、守る者がいてもいい。
 それで全員を敵に回すことになろうとも。
 ……そんな者は現れるはずがない。
 “みんな”といると安心する、だから“みんな”から離れてわざわざ暗がりへとやってくるわけがない。
 世界を敵に回す愚か者などいはしない。
 ……だから、たった一人でもそんな者が現れたなら、それは奇跡。


 そんなわけで、ベアトの台詞は仲間外れにされた者として当然の権利だと思う。
 “終わらせる”ことがどういうことかを思えば、終わらせられるわけがない。
 それどころか、ベアトの代わりに何か言ってやる者が出てこなければいけないだろうに。


 しかし、ひぐらしの結論を出した直後に、その逆に振った作品に挑戦するとか、クリエーターって凄い生き物だなぁ。
 全員で手を繋ごうから、その繋いだ手を振り払って今すぐにでも駆け付けろ、だよ!
 ただこのテーマはひぐらし直後が最も効果的ではある。
 ひぐらしをやった読者は、振り回される運命が決定していたと言っても過言ではない。
 でさ、このテーマを、現実の読者との対決で示そうというところに狂気が見える。
 誰も至れなかったらどうするの? と。
 リスクが高すぎる。
 そのリスクを竜騎士さんは踏み越えてみせた。
 ただただ畏敬の念が湧く。





 薔薇庭園でロノウェ初登場。

「それよりも、お嬢様にこそ、私をお忘れになられたのではないかと、冷や冷やしておりました。何しろ、お嬢様は大層忘れっぽくていらっしゃいますので。」

 12年は長かった。


「しかし、会話は相手を認めるということだ。妾との雑談に応じるようになったということは、そなたが妾の存在を徐々に認め始めている証拠。」

 ゲームは対話。
 向かいの席が空に見えようとも、ゲームのやりとりをしている以上、確かにそこに“い”る。


「……この島にたったひとり閉じ込められ、己の力を取り戻せず、誰に話しかけることもできなかった日々の何と退屈だったことか。」

 虚偽の六軒島の世界に閉じ込められていたヤスの境遇。
 それに重なる19人目の心情。


「黄金郷の扉を開き、全ての家具たちを呼び戻し、妾は六軒島に新たなる城を建てるのだ。」

 黄金の幻想で浸食し、見事に城を建ててしまったな。


「そうだ。そなたが屈服に近付けば近付くほど、ゲームは妾に有利に傾いていく。チェスだってそうであろう?」
「互いのキングを詰め合う過程で、妾たちは様々な駒を取り合っている。確かに妾は未だそなたのキングを追い詰めておらぬ。」
「…しかしそなたは、キングを逃すのに精一杯で、いくつもの大駒を失い、莫大なアドバンテージを失っておるわ。後の展開が妾に有利に傾くのは当然のことよ。」
「そなたは恐らくこれからも、死に物ぐるいで妾のチェックメイトだけからは逃れるだろう。…だが、その間にも妾はそなたの大駒を次々に奪っていく。やがてはキング以外の全てを失い、どのような形でも逃れることの叶わぬ、本当のチェックメイトを受けることになろう。」

 考えないほどに不利な盤面になる。
 18人分のニンゲンの“真実”という駒を守れずに失い、代わりに“幻想”に浸食されたニンゲンの駒を置かれる。
 気付けばキングだけ。
 前に書いた、考えぬ者を殺すための罠のこと。

 盤面に置かれているニンゲンの駒は、本当に真実の姿?
 嘉音は消え、金蔵はすでに死亡、紗音は多重人格、使用人は共犯、親たちは買収され、南條も同様、譲治と朱志香は愛する人に殺され、戦人は記憶を失い縁寿の所に帰らなかった。
 これが真実を守った結果?
 真実を失ったの間違いでは?





 ゲストハウスの子どもたちの会話。

「いない19人目もサンタクロースも、俺たちが認めてやれば、それは少なくとも真里亞の中では“い”るということになるわけだ。…なるほど、子どもの夢を守るためのウソって大事だなぁ。」

 それを認めれば、それを信じる心を守れる。
 逆を言えば、認めないということは、心を傷付けるということ。
 それが人間の持つ“毒素”。
 それがどれだけ19人目の心を傷つけてきたか。
 自分が“い”てもいいと信じる心を、傷つけてきたか。
 自分がいない方がいい、生まれてこなければよかった、とまで思わせたのは罪に値するだろう。





 金蔵が隠し屋敷を作っていてもおかしくないという話。

「…まぁとにかく。西洋かぶれのお父様が、自分の夢を、まるでスケッチブックに描くみたいに実現したのがこの島なのよ。……全てがお父様の思い通りの島。愛人を住まわせる隠し屋敷があっても、何の不思議もない…。」

 金蔵の描いた夢。
 その続きを19人目が綴っているのか。





 碑文の謎と魔女の思惑の話。

「だって、私たちは魔女の碑文なんて言うなぞなぞの答えを教えられたくらいで、本気で右代宮家の家督を明け渡す気? なぞなぞの答えに感服して降参を?」
「そういうことよ。いくらベアトリーチェが一方的にこんなゲームを提案しても、そして見事その答えを示して見せたとしても。私たちは家督を素直に譲るわけもない。」
「……つまり、私たちがこのゲームに対等な条件で挑まなくてはならないという、強制力がない限り、このゲームは成立しないのよ。」
「そうだな。……負けた時、家督を譲ることに強制力を持たせなきゃ、このゲームは成立しない。」
「………なるほどね。わかったわ。……私たちが、喜んで家督を放棄したくなるようにすればいいわけね。なるほど。…ならば確かに、ベアトリーチェは10tの黄金を持っていなければならない…!」
「右代宮家の家督と隠し黄金をよ。…ベアトリーチェはきっと10tの黄金の所在を明かし、それで右代宮家の家督を買収するつもりなのよ。」
「…私たちは、ベアトリーチェなどという余所者を弾き出すために兄弟同盟を組もうとしていた。」
「……しかし、彼女の目論見がこうならば、……私たち兄弟の団結はバラバラにされるわ。…えぇ、今こそはっきり断言できる。……ベアトリーチェの手紙の目的は、私たちの結束を掻き乱すことなのよ。」
“…金蔵は碑文を掲示した。そして今日まで誰も解けなかった。”
“だからベアトリーチェが“解いた”。”
“ならばつまり、これはゲームというより、ベアトリーチェの勝利宣言のようなものなのか…。”
“しかし、霧江はまだ少し引っ掛かると考えていた。”
“もし勝利宣言ならば、勝者らしく、黄金を堂々と示し、家督を買い取ると宣言すればいいだけの話だ。”
“なのに、わざわざこの期に及んで、碑文を解いてみろ、解けたら家督と黄金を全て引き渡そうと、“新たなゲーム”を仕掛けてくる意味が、どこにあるというのか。”
“霧江は何度かチェス盤を引っ繰り返して考えた。”
“どういう最善手ならば、その思考に至るのかを探った。”
「……………驕り、…なのかしら。あるいは、……遊び……?」

 これを“碑文の事件の謎”を解くベアトのゲームのことだと解釈し直す。


 “碑文のなぞなぞ”とは“碑文の事件の謎”。
 その答えとは、つまり事件の真実。
 出題者がその答えを知っているのは当然。
 その答えを明かされて、読者は素直に負けを認めるのか?

 きっと認めない者が出る。
 フェアじゃないから無効とか、こんなのミステリーじゃないとか、言いそうな人たちは大勢いそう。

 その人たちと取引するために“黄金”が必要。
 “碑文の事件の謎”に隠された黄金とは、即ち“黄金の真実”。
 EP6において、それは与えられることになる。
 それを与えられたら、喜んで思考を放棄するだろう。
 それを拒んで自分の手で真実に至ろうとは思うまい。

 読者たちは連携して真実に至ろうとしていた。
 その結束を掻き乱す一手。
 そのものでなくても、見せ金だけでも効果は十分。
 人は誰だって簡単にお金が手に入るならそっちを選ぶ。
 それは真実についても同じ。
 難解な謎よりも、安易な答えを選ぶ。

 ならばこれはベアトの勝利宣言なのか。
 だとしたら、勝者らしく堂々と“黄金の真実”を“真実”であると示せばいいだけ。
 これは驕りか、遊びか。


 堂々と正攻法でこないのは、それに耐えられないから。
 即ち、それが“真実”ではないから。





 19人目がいれば18人を疑わずに済むと気づいたメタ戦人。

「左様でございますか。それではそのようにいたしますよ。冷めてからお召し上がりになって、焼きたてを召し上がらなかったことを存分に後悔なされると良いでしょう。」

 戦人にクッキーの差し入れを断られたロノウェの台詞。
 これはクッキーと推理を重ねた皮肉だろう。
 19人目の推理は熱い内に、EP2の内にやるべきだった。
 EP3になって、冷めてから推理して、熱い内に推理しなかったことを後悔すると良い、と。
 立ち塞がる謎を破るとき、準備万端の推理と、付焼き刃の推理では、出る結果が異なって当然。


「…魔女を否定するもっとも簡単な方法は、18人の誰かを疑うことだ。……18人全員のアリバイは、そう簡単に揃わない。常にひとりくらいはアリバイの脆い人間が生まれる。……俺はそいつを生贄にすることで、常に魔女を否定し続けることもできるだろう。」

 魔女を否定するために、ニンゲンの駒の真実を生贄に捧げる。
 それでは真実を何も守ることはできない。


「まぁ、19人目の人物を仮定したとしても、マスターキーの本数などのように、何人、人間を増やしてもクリアできないトリックも残ってる。…しかし、とりあえずの初手としては悪くないはずだ。」

 マスターキーの謎を解いてから、19人目の駒を使うべきだった。
 初手じゃ勝負にならん。


「妾が19人目の箱の中身が空っぽであることを先に証明すれば、そなたは自動的に、18人の箱の中にクッキーがあることを認めなければならないということになる。」

 箱で喩えられたが、こちらは天秤で喩えよう。
 “箱が空っぽである”という錘を置かれる前に、19人目の皿に根拠となる錘を載せておけばいい。
 そうすれば、即座に否定にはならない。
 こちらの皿に追加で錘を載せれば天秤はこちらに傾く。


“古いチャンバラ映画で誰かが言ってたぜ。「良い城には一箇所だけ、わざと弱い部分がある」ってな。”
“敵はそこに群がる。誘き出される。”
“そしてそこが決戦場となる。”
“俺が弱点を理解し、ヤツが俺のこの弱点を攻めたいと思う限り、……それはつまり、そう攻めるよう俺が誘導したのと同じことなんだ…。”

 これは相手にも言える。
 ベアトも弱点を晒し、そこを攻めよと誘っている。
 読者がそこを攻めたなら、それは誘導の結果ということ。





 九羽鳥庵のベアトについての記述。

「……妾は誰で、何で。…いつからここにいて、…そしていつまでここで日々を過ごせば良いのか。」

 19人目は、このベアトが死んだ後に九羽鳥庵にて隠されて育てられた、と考えている。
 九羽鳥庵のベアトとは違い、見付かってはならないという条件付きで出歩けていただろうが、境遇はほぼ同じ。
 同じようなことを思っていたはず。


「…妾は生まれた時からその屋敷におった。そして屋敷の中だけで生きた。もちろん、庭には出られたが、敷地はとても高い柵で囲まれており、それを出ることは出来ず、また出てはならないと厳しく言われておった。」
「……妾はな、屋敷と庭は自由に歩けたが、その外へは、自らの意思ではたった一歩、出ることさえ叶わなかったのだ。」
「……………そりゃどういう意味だよ。…物心ついた時から、ずっと篭の鳥だったって言いたいのか。」
「……そういうモノだと思っていた。何しろ、気付いた時からそういう生活だったからな。疑問にも思わなかった。」
「お前、…………一体、何者なんだ。」
「それよ。それこそ、妾もまた望んだものだった。」

 19人目は外を見ること、屋敷の人間を隠れて見ることを許されていたが、そちらに行くこと、つまり外に出ることを許されていなかった。
 見られたらどうにかなると教えられでもしたのか。
 例えば、人の持つ毒素がどうとか。

 外に出ようとも思わなかった。
 その生活を疑問にも思わなかった。
 誰がそれを疑問に思わせた?
 ……戦人でしょ!


“私は生まれて初めて、…物事には、立ち向かうことと屈することの他に、逃げ出すという選択肢があることを知ったの。”

 幼少の楼座の独白。
 これは、謎と対峙した時の選択肢のことについてのヒントかな。
 目の前に謎という壁が聳えていた時、どうするのか。

 1、立ち向かい乗り越える。
 2、屈する。
 3、そこから逃げ出し、別のところに向かう。


““篭の中しかしらない鳥は、外に憧れたりしない”って。”
“でも、彼女は鳥じゃない。”
“やっぱり、人間だった。”
“篭の中にしかいなくても、それが世界の全てじゃないって理解していた。”
“だから、………私は誘ったの。”
「柵の外へ、……出てみますか?」
「……………妾は、もうここは嫌だ。……外へ、出たい。そして妾が何者で、この世界はどうなっていて。…妾は何のために生まれてきたのかを、知りたい。」

 目に見えない心を推理する、とか言ったヤツがいるらしい。
 心だけは外に出れると、希望を持ってしまった。


“それは例えるなら、冬の日の暖かな暖炉が、少しずつ空気を澱ませて頭痛をかんじさせるようなもの…?」”
“このままここに居続けてはいけないと知りつつも、窓を開け寒風に身を苛むには、なお勇気が必要なのだ…。”
“彼女は、いつまでもここにいてはいけないと気付き始めていた。”
“いつかは外へ出なくてはならないと気付き始めていた。”
“でも、外の世界のことを知らない彼女にとって、外へ踏み出す第一歩は想像を絶する勇気が必要だったに違いない…。”

 心ない者は、簡単に外に出れば良いと言う。
 さっさと姿を現わせば解決だ、と。
 それが、その子にとってどれだけ勇気を振り絞ったものだったのか。
 その心に気付いたら、その心に寄り添いたいと思ってしまうのだ。

 そう、EP3当時、私は行間から滲み出る“孤独”を感じた。
 それを守りたいと思った。
 手放してはいけないと思った。
 EP4を戦えたのもきっとこのお陰だろう。
 今に至るまで、心を探る旅はかなり迷走したけれども、その“孤独”の部分は私の中で変わらずあったと思う。


「妾は、…もうベアトリーチェは嫌だ。妾が何者なのか、知りたい。ベアトリーチェではない、新しい人間を始めたい。」
「だから、ここから連れ出して欲しい。………もう、紅茶もいらぬ。ドレスもいらぬ。金蔵とも二度と会わぬ。……ここより妾を連れ出してくれ。楼座。」

 これが事件を起こした、物語を描いた動機。





 金蔵の魔法。

“つまり、自分の望む結果が完全に出るまで、延々とタロットを繰り返すその手間と信念、心の気持ちが祈祷に通じ、それが天に届いた時、結果となって昇華されるという、金蔵独自の魔法解釈だ。”

 延々と繰り返すものは、碑文の儀式による惨劇。
 その惨劇を選ぶのは悪魔のルーレット。
 望む結果は、悪魔のルーレットに勝つ目である、ルーレットのゼロによる親の総取り。

 さらに、物語の中に未来の縁寿が乱入できたことから、この物語はその未来で描かれている物語であることがわかる。
 つまり、メッセージボトルの執筆者が生きて島を出た可能性。
 これを加えて解釈。

 ルーレットにより生み出されるカケラたちを掻き集めて執筆者は島を出る。
 カケラたちの物語を紙面に描き、その続きを綴る。
 望む未来に辿り着くまで。

 EP3まででこの結論に辿り着けるんだよなぁ。
 失敗したわ。




 第一の晩。

「驕ったな……。……だから、お前は僕に勝てないんだ……。」
“嘉音は心臓を守る代わりに、自らの左手を捧げたのだ…。”

 攻撃される場所が相手に読まれることの危険性を読者に説いている。


「お見事ですよ、嘉音。……あなたの奮闘により、金蔵の研究の正しさがひとつ、実証されました。」
「……人の心はあらゆる可能性を秘める、か。」

 心の持ちようとその奮闘で、あらゆる成りたい自分になれる。
 ヤスにだって成れる。


「うぅん、いいの。…譲治さまに指輪をもらって、女として生きられた。あなたを庇って、姉として生きられた。私の生は、全てこれで未練なく全うした。」
「……んんんんぁあああぁあああぁあぁ、イライラするぜェ。その達観が本当にイラつくぜぇえぇ?! だから家具なんだよ、お前からは人間の臭いがしねぇえんだよぉおおお!!!」
「妾を見ろよ、妾こそ人間だろぉが?! 家具のくせに、妾よりも完成されたかのような、達観したかのようなことを言うんじゃねええええぇえええぇッ!!」
「…………醜い。その未練が、あなたの正体なの?」
「未練じゃねぇえええぇえ、それが生きるってもんだッ!! 指輪もらったから死んでもいいとかッ! あああぁ理解できねぇ、さっぱりがっかり愕然呆然ッ、全然駄目だぜええええぇえ!!」

 誰として生きるのか、何をして生きるのか。
 それが生の未練。
 誰にもなれず、何もできず。
 何のために生きているのか。





 先代ベアトリーチェ登場。

「ロノウェ。家具の子たちを下げなさい。家具は主に仕えるだけです。全ての罪は主が背負います。」

 罪は主にある。
 真犯人の代わりに殺人を行うのはベアト。
 ならベアトの主は誰なのか?


「何が魔法だ。何が無限の魔女だ。……こんなの、気付くだけの力じゃねぇえかよォ。」

 未来の分岐という考え方に気付く。
 異なる真実が作れることに気付く。
 人の抱いている幻想に気付く。
 人の思いに気付く。

 確かに、気付くだけ。
 でもそれの何と難しいことか。





 ベアトとワルギリアの戦いを頑張って解釈する。

「さぁさお出でなさい、墜落せし塔よ。一なる言語を爆ぜ、その罪を知らしめよ。」
“そう、天の神秘には何人たりとも近づけないのだ。”
“それこそが墜落せし塔の真実。”

 モデルはバベルの塔。
 かつて言語はひとつに統一されていて、全ての人々が意思疎通できていたという。
 人々は協力してあらゆることを成し遂げ、驕り高ぶり、ついには天に届く塔を作り上げようとした。
 神はそれを怒り、その塔を打ち壊し、言語をバラバラにし、人々が協力し合わないようにしたという話。

 一なる言語は、一なる真実に連なる言葉。
 一なる言語は爆ぜ、意思疎通できなくなった人々は異なる真実を打ち立て、一なる言語によって一なる塔を建てることをしなくなった。
 天の神秘は、並び立つ2つの真実を俯瞰する神、執筆者のこと。
 そこに至らせまいと、一なる塔を崩す。
 ならば、並び立つ2つの真実は、双肩の塔のことか。
 墜落する一なる塔より、魔女の心臓を貫く必勝の神の槍が現れる。
 並び立つ真実に挟まれ、魔女はそれを避けることができない。
 エポレットメイト。
 呼び出された7人の巨人兵は、現実に起こった第七のゲーム盤を抜かした第一から八のゲーム盤。
 それが持たされた神の盾は“黄金”。

「いいえ違います。神なる槍がよけたのです。絶対の槍と絶対の盾は争ってはいけないのが神々の掟。それはつまり、防いだのと同じことですがね。」

 黄金の真実を破ってはならないというのが、神々の掟。
 黄金の真実は槍となり、幾万の読者を貫く稲妻の槍となった。
 それを避け、神の槍から持ち替えた稲妻の槌――同じ稲妻なことから黄金の真実――でバックランクメイト。
 それを防ぐ身代わりの塔。
 決して崩れぬその塔は、ゲーム盤の真犯人の真実、即ち赤き真実。
 決して崩れないが、一度しか防げない。
 黄金の真実と赤き真実に塞がれた魔女を天より斜めから神の槍が貫く。
 スマザードメイト。

“すると月の中に、巨大な馬とそれにまたがる戦と死の神の姿が。”
“彼のマントは月を遮り不気味な影で月を食んでいた。”

 EP2で嘉音は、ベアトを月に喩えた。
 月は砕けないが、月を映した水面は掻き乱せると。
 天にある月とは、魔女の大本たる執筆者。
 それを食む戦と死の神は、同じ天の頂まで至った読者。

 こういう決着を回避するために、セブンスランクルークで境界線を引き、それ以上進ませない。


 こんなところか。
 ……これ、ゲーム盤の仕組みを全部理解してないと理解できないやつじゃないか。
 とりあえず、戦と死の神の称号を頂こう。
 これからは、オーディンと呼んでくれ。
 ってのは冗談だけど。


 んー、オーディンは魔術の知識を得るために片目を捧げた。
 ならば、残った片目で現実を、失った片目で魔術を見る、みたいな解釈はどうだろ。

 またオーディンは、ルーン文字の秘密を得るために、自身を生贄にして最高神(オーディン)に捧げたという。
 自分を生贄に、自分に願いを叶えさせた。
 なんだか、リスクを負って奇跡を叶える金蔵の魔法に通じるな。

 他にも、思考と記憶の名を持つ二羽のワタリガラスを飛ばして情報を集めている。
 戦死した勇者を集めて毎日演習を行わせ、敗れた者も日没とともに蘇り、翌日にはまた演習を行うという。
 これはベアトのゲーム盤を使って毎日推理していることのよう。

 なかなかうみねこ的には良い名前なのかも。


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プロフィール

フラット・ホームズ

Author:フラット・ホームズ
「うみねこのなく頃に」の某公式サイトで推理を投稿していた。
その時使っていた名前は察してください。
スタイルは、アンチミステリーをチェス盤で引っ繰り返す、というもの。
キコニアでは、世界を箱庭に見立て、そこにどんな駒を置いたのか、それらを動かして最終的にどういう形に持って行くのか、的な感じのを主にやっている。

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