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うみねこのなく頃に 考察 境界より視やる

PCゲーム「うみねこのなく頃に」の個人的な考察ブログ。「キコニアのなく頃に」についてもガッツリやっている。


続・EP2再読

※6/1 修正 (“魔女だと自称する者”が 八城 → ヤス)


 本日、二連投、2本目。


 婚約指輪を渡す譲治と紗音の会話から抜粋。


「譲治さん。……婚約って、…何でしょうか。」
「結婚の約束をする、という意味だよ。…でも僕はその意味において結婚と同じものだと考えてる。」
「…本当なら、僕は今すぐにでも君を娶って家へ連れ帰りたい。……でも、僕は今、修行中の身で、まだまだ自らの城を築き上げる力量がない。だからこそ、一人前になって初めて、胸を張って君を連れ帰りたいんだ。」
「それは遠い未来の話じゃない。ほんの3年ほどを待って欲しいというだけの話なんだ。……でも僕は、だからといって3年間、自分の気持ちを偽っていたくない。」
「だから、……婚約指輪を贈ろうと決めたんだ。……それは、男として情けない理由かもしれない。妻と仕事を両立できないから待って欲しいなんて理由での婚約なんて、情けないものかもしれない。……でも僕は決して君を、」
「………ありがとうございます。…譲治さんにとって、婚約指輪が、恋人に贈るプレゼントのひとつではないということがわかりました。」
「と、当然だよ。婚約指輪はただのアクセサリーじゃない。尊い約束を指輪の形で残す、恋人たちの宣誓なんだ。」
「…だとすると、すぐにも結婚するなら、不要なものということになりますよね?」
「そ、その時は婚約指輪じゃない。結婚指輪として渡すよ。……どちらにせよ、君に指輪を贈ることに変わりはないのさ。」
「この女は俺のモノだから、誰も手を出すなよっていう売約札みたいなものですね。」
“譲治は自分の情けない性分を知っていた。紗音に惹かれ、立派な男になろうと誓った時、情けない自分と決別すると誓ったのだ。”
“…だから、わざと、少し乱暴な答えを選ぶ。…それが、紗音にとって力強いものになると信じて。”
「………いや、…その通りかもしれない。………紗代。君を、僕の妻にする。…他の誰にもやらない。僕だけのものにする。…だから誰も手を出すな。……そういう指輪だよ。…間違いない。」
「ありがとうございます。譲治さん。…………本当に、嬉しいです。」
“なら譲治さん。”
“…この婚約指輪が、……その約束を果たせないことが運命付けられていたとしても、……私に贈りますか…?”
“紗音はそう聞こうとしたが、…その言葉を飲み込んだ。”
“なぜなら、譲治はその質問の答えをもう口にしている。”
“…譲治は言った。彼にとっての婚約指輪は、結婚指輪と限りなく同じものであると言った。”
“だから、譲治の指輪を受け取ることは、結婚の約束よりもはるかに神聖な意味を持つ。”
「だから。……僕はあえてこれを婚約指輪と呼ぶのをやめにする。今からこれは、婚約じゃない。結婚指輪だ。」
「い、…いいのでしょうか…? 神さまの祝福もなく、私たちが結ばれたことを、その、勝手に宣言してもいいのでしょうか……?」
「うん。神さまも、父さんも母さんも全て事後報告で充分さ。僕たちが、二人は結ばれたと一方的に宣言する。………それは誰にも覆せない。」
「僕は、一時の感情で言ってるんじゃない。今だけの君を見て言ってるんじゃない。………明日の君も、明後日の君も。…それこそ未来の、老後の君すらも見据えて言っている。」
「………いつも譲治さんが話していることですよね。…元気な子どもや孫たちに囲まれて、ゆっくりとした老後を過ごしたいって。」
「うん。その時、僕の隣には年老いた君がいる。それを僕は予告、いや、予言するよ。…うん。必ずその日は訪れるから。」
「……………必ず、…訪れますか。」
「うん。必ず。絶対。……それを、言葉でない形で証明するのが、この指輪なんだよ。」
「……………見せて、……ください。」
“譲治は指輪を見せて欲しいと言われたのだと思い、慌てて指輪の箱を取り出す。”
“しかし、紗音はそれを見ていない。”
“……じっと譲治の瞳を、…いや、瞳の向こうに見えるものに目を凝らしていた…。”
「……私に、………その未来を、………見せてください。」
「あぁ。……見せるよ。必ず。……約束する。………老後までじゃない。…死んだ後も。…僕らは魂になっても、ずっとずっと一緒にいる。」
“紗音は微笑むと、指輪を取り、……とても当たり前な動作で、それを左手の薬指に通した。”
「……魂になっても、………ずっと、…………ずっと……、一緒です。………譲治さん。」
“神の祝福も、牧師の立会いも、何もない。”
“でも、結ばれる二人が、宣言した。”
“二人の魂は今日ここに結ばれたのだ………。”


 長いなあ、まあ、これらを19人目とヤスの話として解釈する。


 真実の世界に住む19人目と、虚偽の世界に住むヤス。
 その二人が結ばれる話。

 婚約は、猫箱の中での真実と幻想の合一。
 ヤスの犯行に見立てた事件を完遂しての心中。

 結婚は、読者の心の岸へ二人揃って辿り着くこと。
 メッセージボトル及び偽書による思考の旅路の完遂。

 今すぐ結婚したい。
 しかし、造物主、執筆者として修業中の身、一人前になってから胸を張って君を連れて帰りたい。
 猫箱の中で結ばれること、誰かの心の中の岸に二人揃って辿り着くこと、その両立ができないから結婚を待って欲しいという理由での婚約なんて、情けないのかもしれない。

 尊い約束を形として残す、恋人たちの宣誓。
 これは碑文だろう。

 ヤスに惹かれ、立派な人間になろうと誓った時、“何もしてこなかった受け身なだけの”情けない自分と決別すると誓ったのだ。
「君を、僕の妻にする。…他の誰にもやらない。僕だけのものにする。…だから誰も手を出すな。……そういう指輪だよ。…間違いない。」
“その約束を果たせないことが運命付けられていたとしても、……私に贈りますか…?”
“そう聞こうとしたが、…その言葉を飲み込んだ。”
“彼にとっての婚約指輪は、結婚指輪と限りなく同じものであると言った。”
“だから、指輪を受け取ることは、結婚の約束よりもはるかに神聖な意味を持つ。”
「神さまの祝福もなく、私たちが結ばれたことを、その、勝手に宣言してもいいのでしょうか……?」
「うん。全て事後報告で充分さ。僕たちが、二人は結ばれたと一方的に宣言する。………それは誰にも覆せない。」
「僕は、一時の感情で言ってるんじゃない。今だけの君を見て言ってるんじゃない。………明日の君も、明後日の君も。…それこそ未来の、老後の君すらも見据えて言っている。」
「………いつも話していることですよね。…元気な子どもや孫たちに囲まれて、ゆっくりとした老後を過ごしたいって。」
「うん。その時、僕の隣には年老いた君がいる。それを僕は予告、いや、予言するよ。…うん。必ずその日は訪れるから。」
「……………必ず、…訪れますか。」
「うん。必ず。絶対。……それを、言葉でない形で証明するのが、この指輪なんだよ。」
「……私に、………その未来を、………見せてください。」
「あぁ。……見せるよ。必ず。……約束する。………老後までじゃない。…死んだ後も。…僕らは魂になっても、ずっとずっと一緒にいる。」
「……魂になっても、………ずっと、…………ずっと……、一緒です。」
“神の祝福も、牧師の立会いも、何もない。”
“でも、結ばれる二人が、宣言した。”
“二人の魂は今日ここに結ばれたのだ………。”

 これを見た後だと、EP8のエピローグ、二人の入水と、黄金郷での再会が感慨深い。
 数十年後の老後も描いたし、八城は約束を守ったんだなぁ。

 “婚約”が誰にも祝福されない結婚だとすると、“結婚”は誰かに祝福される結婚。
 誰かに祝福してもらうためにメッセージボトルを書いた。
 つまり、私は祝福を与える牧師役。
 傍観者にも役割が与えられてるとか、プレイヤー冥利に尽きるなぁ。





 指輪を受け取った後の嘉音との会話。

「でも僕は家具で、……お嬢様の気持ちを受け止めることはできなくてッ!!
「…それが勘違いだった。………私たちは家具かもしれない。人間以下かもしれない。…でも、恋をする資格がないわけじゃなかった。」
「添い遂げられぬ思いなら、ない方がましだって思った!! いつか自分も消え去る日が来て、それがきっとお嬢様を傷つけるなんて勝手に決め付けて、………違うんだッ!!」
「僕が怯えていただけなんだ!! 僕は、……永遠になれない恋なら、しない方がましだって、怯えてただけなんだッ!!」
「……蝉は、生涯の内、数週間にも満たないわずかな期間に恋をして、消えていくんだって。……数週間で終わる恋だからと、恋をしない蝉はいないんじゃないかな。」

 家具は、「虚偽」の世界の住人。
 だからこれは、真実の世界の住人と幻想の世界の住人との恋の話。
 幻想はいつか消えるから、添い遂げられないと思った。
 幻想は消え、真実が一人残される。
 一人残される主人が傷付くと思った。
 永遠になれない恋なら、しない方がましだと怯えた。
 たった二日間で終わる恋だろうと、恋をしないものはいない。


 現実の人間と虚構の人間が結ばれることは、常識的に考えてありえない。
 虚構の人間には、相手を受け止める肉体すらないのだから。
 そして夢からいつか覚める。

 しかし、愛に時間は関係ない。
 肉体も関係ない。
 魂で結ばれれば永遠だ。

 猫箱の中で永遠に寄り添い合う2つの真実。
 あるいは、異なる真実が結ばれて立体的な真実なる。

 そんな感じかね。

 二次元嫁と結ばれるとか、レベルがたけー、時代の最先端を歩んでいるな。
 ま、二次元ではなく三次元だけど。

 真実の擬人化。
 それぞれに姿を与えるなら、クレルとベアトか。
 それを箱の中に置いて寄り添わせ、愛でると。
 ミステリーの真実を擬人化し、その絡みに萌える時代が来たんだなぁ。

 某掛算の界隈のことは知らんけど。
 幻想×真実で色々妄想できそうなんだよなぁ。
 外では真実は大きい顔をしているけど、密室内では途端に弱気。
 どんな幻想だろうと総受け。
 うみねこは、ミステリー界の新たな扉を開いてしまったのか?
 萌えに覆われるのか、腐界に沈むのか、ミステリーの明日はどっちだ!?





 嘉音殺害時のベアトの台詞。

「百年を経ようと家具は家具よ! 捨てる時に家具のために墓穴を掘る馬鹿がどこにいる? 家具は叩き割って薪にして、後には灰しか残らぬわ!!」
「くっくくくく、そういうことよ、家具に刻める墓碑などない! ……貴様は死ねばこれ以上の屈辱を受けることがないと信じているようだが、それは甘いぞ…? 死者を辱めるというのがどういうものか、……妾が教えてやろうぞ。」

 これには3つの意味が込められている。

 一つは自虐。
 自分こそが、人間だと認められていない=墓碑はない=家具。
 これについては19人目とヤスは共通。

 一つは報復。
 自分と同じ目に遭わせてやる。
 家具に貶める=人間だと認められない目に=墓碑はない。

 一つは自嘲。あるいは自負か。
 馬鹿はここにいる。
 自分こそが、家具のために墓穴を掘る馬鹿である、と。





 礼拝堂についての話。

「…いつか、自分もあそこで祝福を受けることもできるかもしれない。しかしそれは、奇跡でも起きない限り、訪れないと。」
“この扉は、奇跡が起きない限り、開かれない。あなたは、奇跡が起きない限り、祝福されない”

 礼拝堂は結婚のためにも使われる。
 “結婚”“祝福”といえば譲治と紗音の会話。
 “扉”といえば黄金郷の扉。
 “奇跡”といえばルーレット。

 要は前回やった譲治と紗音の会話の解釈についてのヒント。





 礼拝堂の鍵が入った封筒が前日の昼から真里亞の手に渡っていたことに気付いた時の真里亞の笑い。

“子どもの悪戯は、時に大人に気付かれなくて、仕掛けた子どもをがっかりさせてしまうことがある。”
“そういう悪戯に、遅れて誰かが引っ掛かってくれると心底嬉しいものだ。”

 朗読者視点から解釈する。
 これはEP6の恋の決闘、あるいはEP7の後、EP1から読み返した時、皆その悪戯に引っ掛かってくれると心底嬉しいと、そういうところだろう。
 ホント迂遠な攻め手。





 朱志香の密室で、その場にいる者を疑うよりも、その場にいない嘉音に疑いが向くという話。

“人間ってのは社会を形成して生きる生き物だ。”
“……つまりそれは、生まれながらに信じあうことが遺伝子に刷り込まれてるってことだ。”

 “人間として生きる=社会を形成している”ということは、“社会を形成していない=人間として生きていない”となる。
 後のゲームに使えるヒントかな。

 さらに言えば、社会を形成していない人物は、人を信じることができない、ということでもあるのかもしれない。





 嘉音が犯人だと断定された時の、幽霊の朱志香とベアトの台詞。

「私だけが知ってたって意味がないんだよ!! 死んでわかった。真実ってのは生きている人間のものだ!! 真実が残らなかったら、死者は報われない!! 何のために嘉音くんが命を懸けたのか、わかんなくなっちゃうッ!!」

 互いだけは互いの真実を知っているという“婚約”の心中だけでは足りず、誰かに祝福される“結婚”をいつか、という約束をした理由がこれ。
 特に、己の命を懸けた19人目が報われない。
 ベアト、つまりヤスが物語内で頑張っているのは、自身が真実だと認められるためだけじゃない。
 主のためでもある。
 それが駒として主に報いる術であるから。

「届かぬわッ!! 死者の嘆きは決して届かぬッ!」
「届くと思ってるだろォ? 届かないんだよ、朱志香ァアアァ???」

 流石実感が籠っている。





 朱志香の部屋の密室時、メタ戦人の台詞。

「……俺にとっての目的は、ニンゲンである19人目の来客ベアトリーチェがどうやって犯行に及んだかに迫ることだ。」

 プレイヤーがどうすればいいのかの指針。
 プレイヤーフレンドリーなゲームマスタリング。
 ホント優しい。





 使用人の密室でのメタ戦人とメタベアト。

“こいつは、二つの方向から俺を締め上げている。”
“一つは、魔女にしかできない密室トリックで、俺に魔女を無理やり信じさせようとする力技のような正攻法。”
“……そしてもう一つは、身内の疑いを濃厚にすることで、俺に魔女を信じた方がマシだと誘導しようとする搦め手だ。”
「正攻法は欠かぬ。…搦め手は正攻法と同時に進めてこそ意味がある。搦め手のみに堕するは、手段が目的となった時に起こる愚策に過ぎぬぞ。」

 これらは“魔女”を相手とした時のもの。
 “人間”の犯人を相手にしていると考えるべきなのだ。
 つまり、自身が犯人である可能性を否定する正攻法。
 そして、自分以外に疑惑を目を向かわせる搦め手。

 とはいえ、それも不足。
 ベアトリーチェは1にして3人の魔女。
 3人それぞれの立場から考えるのだ。

 魔法説のベアトは、魔女のせいであると思わせたい。
 だから劇中で言っていた通りの正攻法に搦め手。

 人間の真犯人は、自分が犯人であると思われたくない。
 だから先ほど言った通りの正攻法に搦め手。

 この2者の搦め手は、向かわせたい方向は違えど、同一の方法を用いている。
 即ち、疑い易い人間を生贄とする方法。

 残る幻想の犯人は、自身を犯人であると思わせたい。
 ならば、他の2者の搦め手こそが正攻法となるべきなのだ。
 なのに正攻法にできなかった。
 搦め手でしか攻めれなかった。
 前回の霧江の論法がそのまま当て嵌まる。
 その時点で正体は知れるというもの。





 留弗夫についてのベアトの台詞。

「…………察しろ。人は生まれながらに詐欺を知りはせぬ。…どこかで被った。だから覚えた。」

 ベアトがしている苛めも、どこかでベアトが被ったから。
 ベアト――犯人の境遇についてのヒント。
 ま、要は上の方で書いていたこと。





 第九の晩直前の書斎。

「………ベアトリーチェ。もうじき、……お前の微笑みに再会できる。…………死んでもいい! お前の微笑みがもう一度見られるならこの命は惜しくないッ!」
「だから、…後生だぁあ、お前に、……もう一度会わせてくれぇええぇえぇ…。そして、愛を誓わせておくれ、私の罪を謝らせておくれ、うぅぅおぉぉぉぉぉぉ……。」
「……だが逃がさんッ!! お前は私のものだ!! 髪の毛の一本から爪先まで、爪の垢すらも私のものなのだッ!! お前の肉一片までも全て私のもので、その亡骸の煮汁まで私のものなのだッ!!」
「逃がさん、今度こそこの手から零さんッ!! お前を永遠に私のものにしてやるぞッ!!! 二度と逃がすものか、二度と逃がすものかッ!!」

「…………ぅうぅ、うっく…、違う、私が言いたいのはこんなことじゃないんだぁぁぁ、ベアトリーチェぇえぇえぇ…。」
「頼む、……もう一度会わせてくれ…。謝らせてくれるだけでいい……。ぅうううぅう、ベアトリーチェぇええぇぇえ、…ひっく、…うっく…! うわああああぁああああああぁああぅああぅあぅぁぅ…!!」
「お前が愛しい、恋しい…! 私が間違っていた…! お前が微笑んでさえくれれば、他には何もいらなかったんだ…。私が間違えた、私がそれを間違えて、……取り返しのつかないことをしてしまった…!」
「その償いに残りの全ての人生を捧げた…!! お前に詫びるために、私の罪を償うために、………全て、……捧げたんだ………。……頼む、私の死の際でもいい…。」
「…………せめて、…………お前に、一言、………謝らせてぇ…ぇ……。ベアトリーチェぇええぇぇぇぇ……。ううう、ひっく、うううッ、うううううううう!」

“馬鹿な、金蔵。”
“男の涙で落とせる女がいるとでも………?”
“まぁでも、……ニンゲンの女は落ちなくても、…ニンゲンじゃない女は落ちるかも知れぬ。”
“金蔵。覚えている……?”
“私としていた、まだ途中だったチェスの譜面……。”
“金蔵は、急に何かを思い出したようにチェスセットに近づく。そこには昨日まで南條と遊んでいたチェスがそのまま残っていた。”
“…その駒を、ざぁっとなぎ払うようにチェス盤から退けると、駒を次々と並べ出す。…それはゲーム途中の盤面だった。”
「………そうだ。こうだ。…………私はクイーンを進めた。…とても良い妙手だった。お前には少々きつすぎるかも知れん一手だった。………お前は、駒を見捨てるか、見捨てないかに悩み、……ずっと悩み………………。」
“金蔵は向かいの席を空けて待つ。
“……そこにきっともうすぶ、対局の相手が帰ってきてくれて、……再び、このゲームが再開できるのを…。”
“…馬鹿な、金蔵。”
“謝りたい? もう一度顔が見たい? 微笑みを永遠のものにしたい?”
“どうして、もっともっとシンプルな一言が口にできないのか。それこそが、世界の一なる、元素なのに………。”
“その時、金蔵が呟いた。”
“……祈り? 懇願?”
“………ただ、呟いたとだけ表現するのが正しかった。”
「……お前を、………愛している…。……ベアトリーチェ……………。」
“それは何の邪心もない、まるで無垢な子どもが口にするような、清らかな言葉だった…。”
“本当に馬鹿な、金蔵。”
“もしももう一度人生をやり直す機会があったなら。”
“そんな言葉では、絶対に女は落とせないことを知りなさい。”
“そう、…奇跡でもない限り。”
“だからこれは、………。”

 これは執筆者、八城の心情だろう。

 「逃がさん」の部分は、猫箱の中で心中する真犯人の19人目の心情が混じっていると思うが、“亡骸の煮汁”という部分が、ベアトの死後にベアトの物語を書き記す八城の存在を示している。
 “二度と”の部分の一度目は、ルーレットに選ばれてベアトを殺し八城になったこと。
 己の肉体という牢獄からベアトは逃れた。
 そして次は、執筆した物語の中に閉じ込めようとしている。
 要は、物語に書くことで、ベアトを思い出そうとしている。

 ベアトを捨てて新しい人生に踏み出したが、間違っていた。
 ベアトがいればそれで良かった。

 これについては、EP8の少年兵の例えが良いか。

 八城、19人目は、誰にも認められない存在だった。
 故に、愛することも愛されることも叶わなかった。
 その代償行為として生み出されたのがベアト。
 自分が愛さなければ存在できないベアト。
 ベアトに愛されることで、自分を認められる19人目。
 互いを支えとすることで、存在を許されていた。

 つまり、19人目にとって、ベアトとは杖。
 生きるための、世界と向き合うための、人間であるための、杖。
 あまりにも幼い頃からずっと長い間、それだけをして生きてきた。
 もうそれなしでは生きていけないくらいに。
 生きていく手段だったのが、それなくしては生きていけない、生きる目的に成り果てたのだ。

 杖を捨て、一人の人間として生きてみた。
 だが、己にとってベアトは家具ではなく人間だった。
 生涯を共にする伴侶だった。
 己の魂を分け与えた、大切な存在。
 二人で一つの魂を満たす、二人揃ってやっと自分は一人の人間足り得るのだと。

 それを忘れた、それこそが罪。
 だから思い出す、蘇らせる。
 かつての盤面を再現し、二人でしたゲームの続きを綴る。
 二人の失われた未来を。
 奇跡が起き、それが叶った時、ベアトリーチェは蘇り、微笑みを見せてくれる。



 そして、金蔵にも同じ解釈ができるだろう。
 八城は、ベアトを蘇らせるために、メッセージボトル及び偽書を用いた。
 金蔵は、ベアトを蘇らせるために、依代となる“人間”を用意した。
 これは即ち、魔法の継承。
 当主の資格は、魂と信念によるとか。





 一日目晩餐前の書斎での南條と金蔵の会話。

「金蔵さんがそんなこともお忘れとは。…チェスを通し、親友と楽しい時間を過ごす、ですぞ。」
「む。……参ったな。それは確か、ずいぶん昔に私がお前に言った言葉だったはず。…………これは参った。」

「…お前とのチェスの決着はつかなかった。……だが、私が忘れていたチェスの目的は、どうやら果たせたらしい。それはどうも、チェックメイトと同じくらい重要なものであったらしい。」

 ベアトのゲームも対戦相手との交流が目的。
 作者と読者の間のことでもあるが、19人目とヤスとの間のことでもある。
 その目的を忘れていた。
 だが思い出した、というのが直ぐ上のヤツ。





 海岸に逃げる楼座と真里亞から。

「ねぇ、ママ。…知ってる? 世界にママはひとりしかいないんだよ。いいママも悪いママもいない。…ただ、ママがひとりいるだけなの。だから真里亞は、世界でたったひとり、ママがいてくれればいい。そして、ママにとって、たったひとりの真里亞になりたいの。」
「………機嫌が良くて甘やかしたい真里亞と、邪魔だから居て欲しくない真里亞は別人じゃないの。真里亞も、たったひとりの真里亞なの。……だから、怖いママもやさしいママも一緒。……真里亞には、…たったひとりの……ママなの……。」

 これはうみねこの全てに通底する“人間”の見方。
 愛のある視点で視た姿と、愛のない視点で視た姿。
 異なる姿だけど、ひとりの人間のものである。
 それらはその人物の一面に過ぎないのだと。

 そして、これはヤスという人物の見方でもある。
 3つの人格を持てど、それらは別人ではなく一人の人間であるのだ。
 だから、一人を選ぶということは、ヤスという一人の人間を壊すことでもある。
 即ち、ヤスを愛するということは、3人全てを愛するということ。
 3人全てを愛さなければ、魂は一つに満たないのだ。

 さらに、これは19人目とヤスのことでもある。
 2つの真実。それらは別の真実ではなく一つの真実であるのだ。
 だから、一つを選ぶということは、一つの真実、一人の人間を壊すことでもある。
 つまり、一人の人間として愛するなら、2人同時に愛さなければならない。
 それが、一人の人間を愛するということなのだから。

 私も2人同時に愛でよう。
 それが私が選ぶべき選択肢なのだから。





 お茶会より。

「こいつを食べればお前は全てから解放される。自由だよ自由ッ! やっと楼座というひとりの人間として自由を得られるんだよ、嬉しいだろうォオオオオォ? 嬉しいはずさ、涎が垂れてるぜ鏡を見てみろよォオオオォオオオっひゃっはああはあはあはははッ!!」

 ベアトの振る舞った料理の数々は、心の傷を癒すために、傷付けた人を無限に殺すというもの。
 要は、ベアトがゲーム盤で無限に繰り返す惨劇も、それが理由となっているということ。
 だがそれは、目的ではなく、手段。
 過去に負った心の傷を癒し、相手を赦し、精神的に解放され、ひとりの人間として自由を得るためのもの。
 それを得られるまで、心の中で無限に殺す。

 そうして、一人の人間として生きることを選んだのが、八城。
 やがて未来において、贖罪のために、そして約束を守るために、ベアトのための物語を綴ることになる。





 裏お茶会、ラムダのゲーム盤とベアトのゲーム盤について。

“今のあなたは、かつてラムダの世界に囚われていた頃の私にそっくりなの。”
“過酷な運命の迷路に閉じ込められ、魔女にいいようにいたぶられている。”
“…私はそこから生まれた魔女。”
“……だからあなたの姉に当たるのかもしれない。”
“だからあなたに力を貸そうと決めたの。”
“しかし、…………私の運命に比べても、……あなたのそれは、…あまりにも惨い。”

“ゲーム盤を少しだけ見させてもらったけど、あまりに卑劣かつ狡猾な仕掛けで、その舞台仕掛けの嫌らしさは多分、ラムダデルタのゲーム盤のそれを遥かに上回るわ。”

“……ま、まぁ、前回は私がついつい哀れになって好きな場所から駒を進めていいわよって言ったら、ベルンのヤツ、お情けの空気も読めずに手持ちのポーンをぜーんぶ入城させた状態から始めて!!”

 ラムダのゲーム盤はひぐらしのものと解釈して良い。
 しかし、それと同時に、執筆者によって生み出されたキャラであることから、執筆者が関わったゲームより生まれたと解釈するべきである。

 私が知っている、執筆者即ち19人目が生み出したゲームは、ベアトのゲームだけである。
 ではベアトのゲームとは何か?

 今回EP2を再読した結果、“婚約”と“結婚”で二度ゲームが行われていることを知った。
 ベアトリーチェ、即ち、黄金の魔女であるヤスが行ったゲームは“結婚”の、執筆された物語。
 その前に行われた“婚約”は19人目が行ったゲーム。

 ルーレットに勝ち、猫箱から抜け出そうとしたのは19人目であって、ヤスではない。
 よって、ベルンの言うラムダのゲームとは、1986年の悪魔のルーレットのことだろう。

 19人目は、祝福されないのであれば、ヤスと結ばれるために心中することを決意した。
 その絶対の意志よって絶対の運命に閉ざされた。
 無限の魔法が紡ぐのは、無限の心中。

 しかし、その内、祝福されたいという気持ちが出てきた。
 それこそが本来の願いであるのだから当然である。
 その方法こそが、物語として執筆して真相に辿り着く者を探し当てる奇跡の魔法。

 19人目の中で、2つの異なる目的が生まれ、それぞれの思考を担当する魔女として、ラムダとベルンが生み出された。
 順番としては、絶対の運命を担当するラムダが先に生まれ、その後に奇跡の運命を担当するベルンが生まれた。

 ベアトのゲームがラムダのゲームに比べて卑劣かつ狡猾というのは、ラムダのゲームが19人目の物語だけなのに対して、ベアトのゲームが19人目の物語を含めて3つの物語が重なり合っているから。

 そして、ラムダのゲームが悪魔のルーレットがとすると、ベルンが勝ったのは第七のゲームということになる。
 ラムダの言う、手持ちのポーンを全部入城させた状態から始めたというのは、親たちが皆有能で全員で協力して碑文を解いた、ということを指すのだろう。


 だとすると、だとすると、小冊子「ラムダデルタ卿による回想記」に出てくる“神を目指す少女”は19人目で、“魔女だと自称する者”がヤスであると解釈することも可能だよな。
 面白い、面白い。これは面白い!
 点と点が繋がるのはなぜこんなにも面白いのか。







 うーん、真相の核心部分がいっぱい無造作に置いてある……。
 誰だよ答えが書いてないって言った奴。
 書いてあるじゃん。
 もう、脱帽するしかない。


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プロフィール

フラット・ホームズ

Author:フラット・ホームズ
「うみねこのなく頃に」の某公式サイトで推理を投稿していた。
その時使っていた名前は察してください。
スタイルは、アンチミステリーをチェス盤で引っ繰り返す、というもの。
キコニアでは、世界を箱庭に見立て、そこにどんな駒を置いたのか、それらを動かして最終的にどういう形に持って行くのか、的な感じのを主にやっている。

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