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うみねこのなく頃に 考察 境界より視やる

PCゲーム「うみねこのなく頃に」の個人的な考察ブログ。「キコニアのなく頃に」についてもガッツリやっている。


エピソード5 前編

 エピソード5から「散」になり、アンチファンタジーvsファンタジーからミステリーvsアンチミステリーに移行した。
 それを象徴する駒が古戸ヱリカだ。

 ヱリカは探偵である。
 探偵は主観を偽れない。
 探偵が観測したことは、誤認や見間違いはあれども、(そのゲーム盤では)実際に起きたことである。
 逆を言えば、探偵が観測していない部分は観測者なき魔女の闇となり、自由に幻想を脚色できるということだ。

 この時、探偵が魔女の闇を意図して作ったかどうかで話は変わってくる。
 魔女の闇は魔女のゲームに必要な要素。
 それを意図して作ったのであれば、それは魔女側の駒ということであり、ゲームをしているメタ世界のことを知っているということでもある。

 例えば、作中のキャラが突然読者に対して喋ったりする漫画などがある。
 キャラがメタ構造を把握していなければできないメタ台詞。
 演劇で言うなら、第四の壁を破るというやつだ。

 作中のキャラが、作中の外を認識できるはずがない。
 なのにそれをしたなら、それは作者がキャラを動かしたものということになる。

 「うみねこ」に当て嵌めるなら、現実的でない描写を俗に幻想描写であるとし、そこでは魔女の都合の良いように駒は動かされる、というところか。
 とは言え、駒にできないことは誰が操ってもできないので、その駒は現実に即した駒ではなく、その代わりに置かれた設定を変更された幻想の駒であることだろう。
 つまり、駒が知りえないことを駒が知っていたなら、それは知っている設定に変更された別の駒ということ。

 わかりやすいところでは紗音や嘉音がそう。
 二人っきりの時、魔法について語ったり、前のゲームの記憶を引き継いでいたりしている。

 今回のゲームでラムダが戦人という駒を動かしていたが、その戦人は買い世界の戦人ではなく、メタ世界の戦人。
 ヱリカと舌戦を繰り広げていた戦人だ。
 これまでベアトと闘っていた戦人は、そのさらに上位にベルンやラムダと共にいる。
 つまり、下位戦人とラムダが動かしていた戦人は別人で別駒なのだ。

 だが、下位世界の駒とメタ世界の駒が同一である駒が存在する。
 それがヱリカだ。


 そもヱリカとは、自身を探偵と称し、自らが赴くところに事件が起こることを自覚し、事件が起こる前から事件解決のために行動するという、メタに自覚的な探偵キャラだ。
 探偵が赴くところで事件が起こるのは作者の都合。
 赤き真実に昇華するための証拠が欲しいのは魔女の都合。
 現実に事件が起こるのは犯人の都合。
 それらの都合を踏まえて動くヱリカは、作者の駒であり、魔女の駒であり、犯人の駒だということ。
 駒を動かすプレイヤーの都合を知るが故に、プレイヤーの意図に従って動くことができるのだ。
 だからヱリカは事件が起こることを知っているし、ゲームが開催されることも、物語として描かれ読者に読まれることも知っている。

 他のキャラは劇だとは知らずに舞台で踊らされているのに対し、ヱリカは観客に見られていることも台本があることも知った上で踊っているようなもの。
 これは大きな違いだ。

 「ひぐらし」では読者が様々なカケラを俯瞰して推理して、犯人はそれを知らずに動いていた。
 だがヱリカは、その読者の視線を意識して動くことができる。
 それは即ち、ヱリカはチェス盤を引っ繰り返して、読者の立場で考えることができるということ。
 簡単に言えば、読者の推理を前提としたトリックを仕掛けられるのだ。


 例えば、探偵が観測しなかったことで犠牲者が死んでいるかどうかが確定しないとする。
 これが探偵が戦人なら、見逃してしまったんだなと思える。
 だがこれがヱリカなら、意図的に死体を見ないことができる。

 探偵が観測しなかったから、魔女の闇になったのか。
 魔女の闇にするために、探偵は観測しなかったのか。
 それによって真実は大きく違ってくる。

 探偵が死体を見なかったことで、読者は本当は死体ではないのではないかと疑う。
 ならば、読者をそう疑わせるために、探偵は死体を見ないようにすることができる。
 つまり、本当にそこに死体があるにもかかわらず、ヱリカが死体を見ないことで死んでいなかったと思わせられるのだ。


 ミステリーの真実の上に、魔女が殺したという幻想を被せたのがファンタジーなら。
 アンチミステリーは、ミステリーの真実の上に、別の人間とトリックによる真実という幻想を被せたもの。
 ヱリカこそはアンチミステリーを象徴する駒。

 実際、ヱリカは赤き真実で否定されていた金蔵を共犯にして、夏妃犯人説でファンタジーを打ち破ろうとしていた。
 確かに、人間とトリックで真実を説明する、ファンタジーの敵ではある。
 だが、赤き真実に反している以上、ミステリーとも敵対する立場に立っているのだ。
 つまりヱリカの立場は、人間とトリックによるアンチミステリーなのである。

 もっと明確に言おう、ミステリーの真実とは異なる人間による真実を構築することがヱリカの役割なのだ。





 ミステリーvsアンチミステリーと戦人視点が信用できるというのは、そもそも出題編で推理可能なことではあると思う。

 第3のゲームにおいて、ブラウン管裁判の例えで、異なる真実が並び立つこと、争うプレイヤーの総意によって勝敗は決まることが語られた。
 さらにその後、ベアトは北風と太陽作戦での勝利では満足しなかったことから、それをご破算にした。
 戦人がベアトを魔女だと認めることは、ベアトの望んだ勝利ではない。
 つまり、ベアトの立ち位置はファンタジーではないのだ。

 ファンタジー以外、アンチファンタジーの中のどこかにベアトの勝利がある。
 ブラウン管裁判でベアトが勝つために主張しているのは魔法説ではなく、人間説。
 しかし、ブラウン管裁判で争うには、異なる真実でなければならない。

 続く第4のゲームで、赤き真実と青き真実のルールが追加された。
 これは思いつきだけで可能性をあげるのなら、後から赤き真実で否定するというルール。
 否定されたくなければ筋の通った推理をするように、というわけだ。

 幾ら可能性を挙げようと、本当の真実はひとつ。
 よって、ミステリーの真実こそが戦人が目指すべき勝利。

 だが、赤き真実による否定を潜り抜けるものが、ミステリーの真実一つではベアトの勝利の目がない。
 ベアトが勝利するためには、赤き真実を抜けるミステリー以外の真実が必要となる。
 よって、ミステリーvsアンチミステリーこそが本当のゲームということになる。

 そして、そうである以上、ファンタジーを標榜する役割を課せられたベアトの役目は終わりであり、もはや負けしかないのである。


 ミステリーの真実も、赤き真実を抜けるもうひとつの真実も、どちらも推理されることによって成立する。
 故に、ベアトのゲームは推理可能である。

 そして第4のゲームで、
妾は黄金の魔女、ベアトリーチェ。そして右代宮金蔵の孫、右代宮戦人と闘うためにこのゲームを開催した。
 と明かした。

 それは戦人には推理可能だという保証だ。
 下位世界の戦人はひとつのカケラで起こった事件しか知りえない。
 故に、下位世界の戦人が観測した情報のみで推理可能にしなければならない。

 さらに、それらのカケラを物語にして書いたメッセージボトルが存在し、その末尾に真実の解明を頼んでいる。
 それは読者ともゲームをしたいということ。
 そしてそのためには、戦人視点は信用できる情報でなくてはならない。


 以上を踏まえて、第5のゲームの話を繰り返させてもらおう。

 第5のゲームでの探偵視点の話は、これまでのゲームの戦人視点を保証するためのものではあるが、それだけではない。
 それだけではただの解答でしかない。第5のゲームの謎にはならない。
 ミステリーだけで、アンチミステリーが存在しない。
 新しい謎がないと第5のゲームの意味がない。
 それではゲームを介してベアトとコミュニケーションが図れない。

 だからそう、新たな謎を提示するために、探偵視点を持ち出したのだ。

 “探偵が見ていない死体は、実際には死んでいるか判らない”。
 これはこれまでのゲームの解答でありヒントであると同時に、新しいゲームにおける新たな謎でなければならない。

 誰にでも解る解答なら、それは解る人には解り、解らない人には解らないものにはならない。
 解る人には謎であると解る。だから解る人にだけ解る解答になるのではないだろうか。



 以上が、私がベアトとゲームを介して独自にコミュニケーションを図った結果だ。
 これまでの話題を踏まえて、新しい話題を提示する。
 そうやって話題は膨らんでいくのだと思う。


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  1. 2014/02/22(土) 21:22:30|
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プロフィール

フラット・ホームズ

Author:フラット・ホームズ
「うみねこのなく頃に」の某公式サイトで推理を投稿していた。
その時使っていた名前は察してください。
スタイルは、アンチミステリーをチェス盤で引っ繰り返す、というもの。
キコニアでは、世界を箱庭に見立て、そこにどんな駒を置いたのか、それらを動かして最終的にどういう形に持って行くのか、的な感じのを主にやっている。

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