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うみねこのなく頃に 考察 境界より視やる

PCゲーム「うみねこのなく頃に」の個人的な考察ブログ。「キコニアのなく頃に」についてもガッツリやっている。


ヤスから視える風景

 “ヤス”は右代宮家の使用人である。
 紗音と同じ部屋で寝泊りしている。

 だが、紗音は部屋を一人で使っているのが現実。
 そして“ヤス”が紗音であるというのは「黄金の真実」。
 よって、“ヤス”は紗音以外の“誰か”が作り出した幻想である。


 その“誰か”は紗音が使用人として働いている姿を覗いていた。
 そして、紗音の隣に“ヤス”という幻想の駒を置いた。
 それは紗音の隣にいたいという願望の表れだろう。
 紗音と3歳違いのその“誰か”は、近しい年齢の紗音に親近感を覚えたのかもしれない。
 だから、“ヤス”に紗音の親友という設定を与えた。

 “ヤス”は使用人なのだから、当然、福音の家出身の孤児であるという設定だ。
 紗音と同じ部屋を与えられ、紗音と共に使用人の仕事をこなす毎日。
 使用人としての振る舞いは、紗音を手本としている。
 現実では“ヤス”は存在していないので、“ヤス”の失敗は、実際は紗音の失敗。
 しかし、その失敗は“ヤス”の失敗という設定にしたので、“紗音”は失敗していない設定になる。
 だから“紗音”は失敗をしない完璧な使用人。
 “紗音”は“ヤス”の理想の使用人像なのだ。
 紗音は“誰か”の憧れなのだ。


 だが、見ているだけでは物足りなくなる。
 やがて“誰か”は紗音のチビ箒を隠すようになった。
 紗音の体験は、“ヤス”の体験。
 “ヤス”はそれを“魔女ベアトリーチェ”の仕業だと考えるようになる。
 そして、チビ箒を隠すことは、“ヤス”と“魔女”のコミュニケーションとなった。

 勿論、それは“ヤス”の設定であり、“誰か”の願望に過ぎない。
 だがそれは、紗音に信じさせることができれば、それが真実になりえるのだ。



 ――時が経ち、新たな使用人がやって来た。
 紗音を蔑ろにする年上の後輩たちだ。
 “親友”である紗音が受けた仕打ちに“誰か”は怒り、仕返しを企む。

 ある部屋のベッドの下に隠れ、部屋を掃除している全員が背を向けた隙に、いつも通りにベッドに放り投げてある鍵束と、その部屋の鍵だけ抜き取った鍵束を交換した。
 抜き取った鍵は事前にロッカーの中に。

 初めての謎。初めてのミステリー。初めての魔女幻想。
 もう紗音だけの“魔女”じゃあない。他の使用人たちにも“魔女”を信じる者が現れた。
 もう紗音だけの親友というだけでは物足りない。
 “ヤス”がいくら使用人として働いても、誰も認めてくれない。
 幻想なのだから。

『使用人ごっこは、もうやめる。……世界を、変更。』

 使用人に対する憧れを捨て、魔女になることに憧れた。
 “使用人”から“魔女”へ。
 “六軒島を支配する魔女”として、他の者たちにも自身の存在が許される幻想を広めよう。
 幻想が現実を侵食した分、“魔女”がいてもいい世界は広がる。
 全ては“魔女”の仕業だから、“誰か”の仕業ではない。
 “誰か”は“魔女”という分身を介して、夜の屋敷の中を自由に闊歩する。



 ――また時が経ち、かつての“親友”である紗音が戦人に恋をしたらしい。
 紗音が恋した戦人とはどんな奴なのか。
 恋とはどんなものなのか。
 興味の赴くままに戦人を着け回す。
 戦人はミステリーが好きで、その中でもホワイダニットを題材にしたものが好き。
 それは“誰か”の求めていたタイプのニンゲン。
 益々興味を持ったかもしれない。
 そして、いつものように悪戯を装った謎を仕掛けたのだろう。

 それに対して戦人がどう反応したのか。
 確か当時は魔女を怖がっていたとか。
 だから怖がりながらも、このような啖呵を切ったことだろう。

「魔女なんかいねぇ。全ては人間の仕業だ。絶対に暴いてやる」

 ……とか何とか。推測に過ぎないが。
 これは戦人にとって、反射的に出た軽い気持ちの言葉だったことだろう。
 だが、“誰か”にとっては違った。

 幻想を信じさせ、そこに居場所を見出していたとしても、本当は謎を解いて欲しかった。
 幻想を暴き、自身の存在を見つけ出して欲しかった。
 そんな“誰か”にとって、その言葉は救いだ。

 誰もが思考停止し、謎を解こうともしない中、半ば諦めかけていた願いを叶えてくれるかもしれない男が現れたのだ。
 それは正に、地獄に仏。
 蜘蛛の糸を垂らされたが如く、一筋の希望。
 闇の中で見つけた、たった一つの小さな光。
 その男が自分の願いを叶える運命の男に思えたとしても仕方のないことかもしれない。

妾が今、そなたに思い出すことを要求している罪は、右代宮戦人とベアトリーチェの間のものではない。

 その約束は戦人とベアトの間に結ばれたものではない。
 戦人が一人で約束したものだ。
 だけれども、それを聞いた“誰か”にとってもそれは約束なのだ。

 願いを叶えるという“約束”があるのだから、もう諦める必要はない。
 戦人に相応しい“魔女”を設定し、戦人のために謎を作ろう。
 全ては戦人に解かれるためにある。


 だが、戦人は六軒島に戻ってこなかった。
 戦人に謎を解いてもらうには、戦人を待ち続けなければならない。
 待ち続ける間、誰も謎を解こうともしてくれない六軒島から出ることも叶わない。
 望みが叶うなら叶う。叶わないなら叶わない。
 それがはっきりせずには、一歩も前に進むことができない。

 解いてくれることを永遠に待つことしかできない。
 だから、もう待たない。
 目を背けることもできない“謎”を目の前に突きつけ、解けなければ出ることの叶わない猫箱に閉じ込めてしまおう。

 ……そういう考えに行き着いてしまったのかもしれない。


 戦人の罪は不用意に希望を持たせたこと。そしてそれを忘れ、放っておいたこと。
 知らぬことは罪だ。知ろうとしないことも罪だ。
 そして、罪を自覚せぬことが最も重い罪なのだ。





 ……ちなみに、紗音が恋を諦めた後にその恋を譲り受けたのは、“ヤス”が譲り受けたという設定にして「黄金の真実」に信憑性を増やすためである。


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  1. 2014/01/12(日) 00:37:45|
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フラット・ホームズ

Author:フラット・ホームズ
「うみねこのなく頃に」の某公式サイトで推理を投稿していた。
その時使っていた名前は察してください。
スタイルは、アンチミステリーをチェス盤で引っ繰り返す、というもの。
キコニアでは、世界を箱庭に見立て、そこにどんな駒を置いたのか、それらを動かして最終的にどういう形に持って行くのか、的な感じのを主にやっている。

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