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うみねこのなく頃に 考察 境界より視やる

PCゲーム「うみねこのなく頃に」の個人的な考察ブログ。「キコニアのなく頃に」についてもガッツリやっている。


続・EP5の再読

 連日投稿。


 いとこ部屋での遺体発見時。

“まるでそれは、学芸発表会の演劇で、いよいよ自分の出番が近付いてきた子が、舞台袖で浮かべる笑みのようだ…。”

 まさにその通り。
 ヱリカは舞台袖でずっと出番を待っていた駒。
 やっと来た出番に心が躍っているのだろう。





 客間に集まった生き残り。

“ヱリカ、主人公はあんたよ。さぁ、始めなさい…!

 19人目が演じる主人公。
 ヤスの不在のゲームではヱリカの出番。


「いえ、呼び出し音はします。聞こえていないはずはないのですが……。」
「……………。」

 現れない蔵臼。
 紗音の報告の後、ヱリカが目を開き、夏妃が無言になるという演出。
 まるで、夏妃が蔵臼のことを喋らないか、ヱリカが確認しているようだ。
 というか、そうだというヒントだろう。






 対策を取るベアトと悪魔たち。

「夏妃はキング。動けぬ駒成れど、取らせることは許されぬ! ……先手を取ろう。ここで失すると、夏妃が詰められる…! ガァプ、頼めるか?!」

 本来ならキングは真犯人。
 それを夏妃に見立てて、ゲームを外側から観戦する。
 そうすることで見えてくるものもあるだろう。





 蔵臼の部屋。

“ヱリカは、この殺人が、まるでテレビの向こうの出来事であるかのように、呆れながら笑い捨てる。”
“……理解できない。”
“どうしてこいつはこんなにも、“居る世界”が異なってるんだ?”
“まるで、自分たちとは別次元の存在みたいだ…。”

 ヱリカが本来住む世界は、虚偽の世界。
“探偵”というファンタジー。


「………お前には心ってもんがねぇのか。」
「心? 何ですか、それ?」

 戦人、それをお前が言うか。
 お前がそれを推理しないから、心が存在しないんだよ。
 心が認められないんだよ。
 だからこんな事件が起こるんじゃないか。





 ラムダとベルン。

「3つ目。そもそも死体が別人。犠牲者そっくりの身代わり死体よ。譲治たちは最初から隠れていて、その後に身代わり死体を片づけた。」

 犠牲者そっくりの身代わり死体は、19年前の赤子の死のヒント。


“……この死体消失の一手。ラムダとベアトの双方にとって、なかなか有効だわ。”
“とりあえず、私も死体消失について、思いつく仮説を3つほど上げてみた。”
“1つの謎に対し、3つの青い楔。”
“だから、3つのうち、1つを否定すればいいわけじゃない。”
“3つの楔を全て抜かない限り、この謎は貫かれてる。”
“それが、魔女狩りの鉄則。”
“楔は一本じゃ全然足りない。”
“楔一本で死んでくれるのは吸血鬼程度。”
“魔女に比べりゃ、吸血鬼なんて貧弱なもんよ。”
“……本物の魔女はね、楔で滅多刺しにしなきゃしなないのよ?”

 ラムダとベアト、二つの思惑。
 それに対し、3つの青い楔。
 面の推理とは、結果、一本の楔が貫いていればいいというものではない。
 二つの思惑を貫くのは、二本の楔。
 全ての弱点を、全て同時に貫かなくては、魔女は死なない。


「死体がなければ行方不明。……行方不明扱いとは、犯人と疑われ、同時に犠牲者とも疑われる、まさに猫箱の中身そのもの。……開かれることの決してない猫箱の中の暗闇こそ、我ら悪魔と魔女の住処…! 一手遅かったわね、名探偵さん。……ふっふふふ。」

 猫箱の中の2つの可能性。
 これを同時に貫くことが、魔女との戦い方。


「ふ、……ふふふふ。おかしな三角対決になったものよ。我らはそれぞれが敵であり、時に意図せずして連携しておる。……三つ巴が、2対1になったかと思えば、逆に1対2にもなる。……ほらあれだ。中国のバトルロイヤル! 三国志とやらに似てるとは思わんか?」
「天下三分の計ですな。お嬢様にしてはずいぶんと高尚な例えですよ、ぷっくっく…!」

 魔法の余地を残そうとする者。
 天秤の均衡を維持しようとする者。
 魔法を暴こうとする者。


“……曹操が参謀として招いた名門、司馬氏は、やがて権力闘争で中枢を支配し、最後には国を乗っ取ってしまう。”
「………参謀として招き、……乗っ取られるか。………くくくく、……面白いぞ。……ラムダデルタ卿め……! くっくくくくくっくくっくくくくッ!!」

 参謀として黄金の魔女を招き、それに乗っ取られる。
 黄金の真実が、真実を食い破り生まれ出でる。





 書斎前。

「…き、…機嫌をまた、損ねられているのかもしれませんな…。金蔵さんは時に、ほんのわずかの変化であっても、それに吉凶を感じ、本人以外には与り知れぬ理由で機嫌を損ねたりします…。」

 金蔵、ルーレット回しすぎ。




 書斎内。

「ふっ。殺人が起こり、大勢が殺された屋敷内を、のんびり真夜中の散歩と洒落込んでいた、では誰も納得はするまいな。私ならばむしろ本当にやりかねんが。」

 犯人さんはそういう自白やめてw


「良い覚悟だ。……案ずるな。絶対に金蔵は殺させぬ。」

 幻想の金蔵を、殺させない。
 本来のゲームでは、幻想の誰を殺させないのか。


“緩やかに笑いながら、一同を見回してから話し始めた。”
“その様子はまるで、スポットライトを浴びて、舞台中央に出てきた、演劇の主人公のようだった…。”

 この劇の主人公が、満を持して舞台の中央に躍り出た、って感じだからなぁ。
 展開編は姿を現わした19人目が縦横無尽に暴れまわる。
 ヱリカに八城、それにクレル。


「グッド。………最終目撃者だと名乗ることは、普通、困難なんです。……自分が目撃した後に、誰も目撃出来ないと確信できる理由をご存知でない限り。」

 嘉音(真)は野に放たれたネズミ。
 その留守を託された夏妃は、それが金蔵を目撃できる最後だと知っていた。





 
“それは魔女の杭。青き真実の力を宿した魔女の楔…!”

 金蔵が生きている余地を切り開くための青き真実。
 本来のゲームでも同じように、ベアトはヤスの存在の余地、青き真実が貫ける穴を用意しなければならない。


「悪魔との戦いに、これほど相応しい駒はいないわ。私の分身たるヱリカに、魔女の最大の天敵ドラノール。」
「私は2つのルークで今や、セブンスランクを支配したわ。……見せてもらうわよ、ラムダデルタ。そしてベアトリーチェ。あんたたちの無駄な足掻きをね。……くすくす、あっははははははははあはははははははははッ!!」

 セブンスランクルークは、魔法説のベアト。
 悪魔の証明により、無数の未知を生み出していた。
 それを逆に支配され、ノックスにより未知のXは封殺。
 手掛かりのある推理の通過を許した。
 今こそ、ワルギリア戦で示された手順を踏むべし。


「この世に我らの神を除いて、他に一切の神はなく、一切の隠し扉は存在しマセン。存在してはなりマセン、させマセン。吾らの神への冒涜デス。」

 “この世界”を生み出した神はフェザリーヌ。
 世界を観測し、朗読し、執筆する。
 故に、他に一切の神はなく、手掛かりのない一切の隠し扉は存在を許されない。
 未知の技術も、未来の技術も、人類の進歩も、現実の世界ではない“この世界”には許されない。


「夏妃は“金蔵と書斎で話をした”と主張しているが、対面で話をしたとまでは言っておらぬ。即ち、金蔵が書斎以外の場所にいたとしても、会話が成立すれば矛盾はないわ!」

「夏妃はその書斎で、内線電話を使い、別の場所にいる金蔵と会話をしていたのだ! 親族たちを嫌う金蔵が、書斎に立ち入られることを予見して別の場所に避難していたとしても、何の不思議もないわ。おそらく、それは隠し屋敷、九羽鳥庵かもしれぬぞ!」

「夏妃の言う金蔵が、金蔵本人を指さない可能性がある! 夏妃の言う金蔵とはこの部屋の別称かもしれぬぞ? 金蔵は九羽鳥庵に避難していて連絡不能。夏妃はこの部屋を“お父様”と呼び、この部屋で瞑想することで、金蔵より啓示を受けているつもりになっていたのかもしれぬ!!」

 “対面で話をしていない可能性”。
 “内線電話で別の場所にいる金蔵と会話していた可能性”。
 “書斎に立ち入られることを予見していて別の場所に避難していた可能性”。
 “夏妃の言う金蔵が、金蔵ではない可能性”。

 これらの手掛かりから導き出される推理。
 金蔵(偽)は実は嘉音(真)であり、本物の金蔵ではない。
 夏妃の言う金蔵は、嘉音(真)のことであり、それを金蔵だと認識していた。
 嘉音(真)は書斎に入られることを予見して、すでに別の場所に避難していた。
 そこから内線電話で、その時間に書斎に呼んでいた夏妃と会話していた。
 そして、金蔵が不在であることを隠すように命じた。
 故に夏妃は、これが金蔵の“最終目撃”となることを知っていた。


““真実を知る者”夏妃が自ら否定したため、そこに赤き真実が宿ってしまう…!”

 “この世界”を作った者は、“この世界”の真実を知っている。
 故に、“この世界”で赤き真実が使える。


「……見事デス。例え、あなたが中庭に落ち、生きようが死のうが、金蔵に密室が打ち破れたことに変わりはナイ…! 命を捨てて飛んだあなたこそ殉教者…!! よくぞ、我らの密室結界を打ち破って見せマシタ。天晴れデス、右代宮戦人ッ!!」

 生死は兎も角、正誤は兎も角、密室を打ち破れたことには変わりない。
 推理と生死を共にする殉教者。
 密室を打ち破る推理力と、リスクを踏み越えるその胆力に賞賛を。


「その窓が俺たちの出口の扉だッ! ……だから飛べ!! お前は密室に閉じ込められてるような魔女じゃないだろうがッ!!」
“もはや書斎は密室ではない。ここより飛べる、逃げられる…!”
“今こそ、魔女を捕らえ窒息させて殺そうとする密室は破られたのだ。”
「う、……うむ…!! き、金蔵も…!」
「行け。戦人が答えを見せた時点で、わしの魂はすでにこの密室を逃れておるわ。」

 猫箱という名の、魔女を閉じ込める密室。
 その密室を打ち破り、魔女を救出せよ。


“ベアトも、戦人のように、……飛ぶ。”
“そして、雨粒の宝石箱の世界を、戦人の胸に飛び込むように舞い降りた。”
“……戦人は天使の羽を受け止めるように、彼女を両手で受け止めた。”
“それは、まるで……、騎士が、塔に捕らわれた姫君を受け止めたかのような、……まるでおとび話の中の一場面を再現した、美しき絵画のようだった…。”
「………ヤッバイ。……惚れたわ。…右代宮家の当主って、こういうヤツらばっかなの?」
「右代宮金蔵の破天荒を記せば、……書斎の魔導書の数に負けぬ長い波乱の物語が書けるでしょうな。その次の当主の物語も、記す価値が大いにありそうだ。いえいえ、もう記しておりますとも。それはもう、長い長い物語に。……ぷっくっくっく。」

 右代宮真里亞が飛び降りたヤスを受け止めた。
 金蔵の次の当主の物語。
 それはもう記している最中。





 黄金郷へ挨拶に来たドラノール。

「………魔法ってのは、……やさしい、嘘、……なのか。」
「“嘘”というと聞こえが悪いですね。日本語で表現する場合、“修飾”と呼んだ方が、より相応しいでしょう。」

 退屈な日々に、潤いを与えるのが魔法。
 例えば、寂しいひとりぼっちの帰り道、白線を踏み外さないで歩いた。
 それを、一歩踏み外せば崖から落ちるそんなスリリングな道を歩き切った、みたいに修飾すれば、それはまるでひとつの冒険を終えたかのよう。

 つまりそれは、何かを誤魔化すために嘘ではない、何かを飾り立てるための修飾なのだ。
 理解できるかな。
 AをBだと偽った時、Aということを誤魔化したかったのか、Bだと飾り立てたかったのか、では目的が異なるということ。


「違いマス。飴を与えるという結果に対し、より美しく楽しい修飾を与えたことに、意味があるのデス。」

 それは楽しむための修飾。
 ミステリーも、皆でより面白い推理を出し合えば、合っていようが間違っていようが、楽しいに決まっている。
 綺羅星のようなロジックで飾り立てよう、ということだ。


「それを、全員のアリバイを調べて、誰がポケットに忍ばせたのか調べ上げて特定するのは、私は無粋なことと思っていマス。飴を受け取り、少女が喜んだという、結果こそが重要デス。そして、少女を喜ばせるために修飾されたことが、意味あることなのデス。」

 修飾したのは、“誰”のためなのか?
 “誰”のために、何を修飾したのか?
 “誰”を、どのように喜ばせようとしたのか?

 この物語は、ベアトリーチェに捧げられた。
 物語を修飾したのは、ベアトリーチェのため。


「……結果において、私が魔女たちを処刑するのに変わりナイ。……私の憐みなど、所詮は無駄な修飾に過ぎマセン。あってもなくても、何も変わらナイ。なら、なくてもイイ……。」
「………そんなことはありませんよ。結果が同じでも、心が違えば、大きく意味が異なることもあります。」

「そうだな。………結果が同じに見えても、……真心ってヤツがあるかないかで、意味は全然変わるかもしれねぇぜ…。」
「そうでショウカ……。………私の心など、あってもなくても、何の意味もナイ。」

 右代宮真里亞の心。
 それがあろうと、なかろうと、ヤスの真実は変わらない。
 だが、それがあるかないかで、ヤスの真実の意味が変わる。
 だから、右代宮真里亞の心には、意味がある。


「今の話を聞いて、俺はお前の見方を少し変えたぜ。……だから心が無意味なんてことは、絶対にねぇ。」


“心”を知ることは、魔法の本質への第一歩だからだ。”
“戦人はいつの間にか、……ベアトの本質、魔女の本質、…そして一番最初の本質となる魔法について、……無意識に、少しずつ理解を始めているのかもしれない。”
“魔女になるにせよ、討つにせよ。……魔法を知ることは、全ての第一歩。”


「わかりマセン。突然、あの瞬間に、切り札の使用が禁じられたのデス。それを失った時点で、あなたの勝利は約束されマシタ。」
「………ゲームマスター、ラムダデルタ卿の干渉でしょう。」
「あいつめ…。………結局、あの戦いの全て、ラムダデルタの手の平での茶番ってわけかよ。“俺たち”は、あいつの筋書き通りに、お芝居をやらされたってわけだ。」

 スケールを拡大し、物語の全てに変えれば、全ては“神”の筋書き通りのお芝居を披露する舞台、と見れる。


「“金蔵が存在しない”のは、すでに確定事項のハズ。ラムダデルタ卿もベルンカステル卿も、それをよくご存じのはずデス。なのに、二人とも金蔵が存在する余地を残してゲームを進めてイマス。……まるで二人で結託して、金蔵を否定させないかのようデス。」

「…………確かに少し、おかしいですね。…ラムダでスタ卿とベルンカステル卿は、魔女が優勢にならない限り、対立する関係にあるはず。……現在の流れでは、二人が結託することは考え難いのですが…。」

 “金蔵が存在しない”だとベアトに有利過ぎる。
 奇跡の余地を残さないと。
 つまり逆側である、金蔵を存在させるロジックを、そのための手掛かりを。
 だからラムダとベルンは金蔵についての謎をこれほどに用意している。
 なぜ謎を用意したのか?
 それは謎を解いてもらうために決まっている。


「ここに私がいて、あなたがいることも。ベアトがいることも。そしてドラノールが招かれたことも。……全てはこの子が望んだことなのです。……ドラノールとあなたが過ごす、このささやかな紅茶の時間さえも。」

 ベアトがいることも望む、この子って誰?






「立って下さい。片足で。」

 これも実はヒント
 両足で立てば倒れない。しかし、片足だけで立つと倒れて易い。
 19人目とヤスの2つの柱の片方を欠くと、世界は崩れ落ちる。


「つまり、屋敷にいた人物全員が、ノック音の発生源とは成り得ない、という意味デス。……そしてこの“全員”とは、誰も把握していない、観測されていない人物であったとしても含みマス。」

 観測された人物と、観測されていない人物、全員に不可能。
 だがしかし、その“全員”には、“金蔵だと把握している人物”は含まれていない。
 なぜなら、“金蔵は存在しない”から。
 前提がそうであるから、“全員”から“存在しない金蔵”は除外されている。
 つまり、“存在しない金蔵”として存在している人物がいたならば、ノックは可能。





「……お前、疲れてんのか? メシくらい、落ち着いて食えよ。」
“窓から中庭に脱出して見せた時。”
“ヱリカの言う通り、実際に戦人は、雨どいを伝いながら壁を這い下りた。”
“途中で手が滑り、結構な高さを飛び降りてしまったが、うまいこと着地でき、腰を打たずには済んだ。”
“……それには目撃者などないが、この食堂の、たぶん、ヱリカを除く全員が、きっとそうだったろうと理解している。”
“3階の窓から飛び降りたなんて、誰も最初から信じていないのだ。”
“……それを直接、目撃していなくても。”
“だから、ヱリカが何を言い出し、何に拘っているのかわかりかね、怪訝な顔と白い目、そしてひそひそとした囁きを聞こえさせる……。”
「反論できないでしょう?! あなたの飛び降りは否定された!! 私の真実が勝ったんです!! 私の青き真実は有効です!」
「我が主、それをどうかお認め下さい!! 私は無能ではありません、失望もさせません…! 必ずやこのようにご期待に応えて見せますから、どうかお見捨てにならないで下さい!! 我が主…!!」
〝天井よりさらに向こうにいるのかもしれない誰かに向かって、ヱリカは両手を広げてそう叫ぶ。”
“そして、………それに応えたかのような、大きな大きな落雷が、すぐ近くに落ちる。”
“ものすごい音だった。地響きさえ感じた。”
“その音と同時に、ヱリカは、まるで操り人形の糸が全て千切れたかのように、カクンと脱力し、椅子に座り落ちる。”
“そして、ゆっくりと元通りの風雨の音が部屋を満たすと、……まるで立ち眩みから目覚めたように、ヱリカはうっすらと目を開ける。”
“すると、何事もなかったかのように、静かに食事を再開する。”
“先ほどからずっとそうであるかのように、平然と。”
“……今、ヱリカは突然立ち上がって、おかしなことを捲し立てなかったっけ……?”
“思わず、自問したくなるくらいに、ヱリカはさも当然のように、静かに食事を続けている。”
“その平然とした様子に一同は、……自分たちが疲れてしまっていて、ヱリカが突然叫び出すような幻を見てしまったのだろうと、それぞれが自分を納得させてしまった。”
“だから、ほんの数舜前のヱリカの変貌ぶりは、白昼夢のような扱いとなり、すぐに全員の記憶から薄れていった……。”

 ゲーム盤のニンゲンたちには、幻想は見えていない。
 幻想を見せられているのは、それより上位の階層の住人。
 その幻想を知り、上位世界へと呼びかけることが可能なニンゲンの駒など存在しない。
 駒には不可能なことはさせることができない。
 それができたということは、それが可能な駒だったということ。
 上位階層を観測できるのは、その世界を生み出した者か、それを共有している者のみ。
 つまり、この時点で、ヱリカが犯人側なのは確定している。

 後、ヱリカの振る舞いは本気ではなく、芝居である。
 即ち、ヒント。




 ベアトと悪魔たちの会議。

「無駄なことよ。アリバイがあろうとなかろうと、妾たちの存在を否定することなど出来ぬわ。……金蔵は窓より逃れ、今や六軒島の霞よ。決して捕らえることも、否定することも出来ぬ。」
「差し詰め、チェス盤の裏側にでも逃げ込んだ、とでも言えばいいのかしら。」
「その場合は仕舞い込んだ、というのが適当でしょうな。」

 “金蔵は存在しない”という赤字を与えられた。
 金蔵(偽)こと嘉音(真)は、ゲーム盤に“存在しない金蔵”として存在している。





 客間、夏妃の退室。

「どうやってでも結構です。客観的に、あなたには犯行が可能だったと証明してもらえれば結構なのです。………他の皆さんは協力して下さっています。夏妃さんも、そう邪険にされず、どうかアリバイとその証拠を示してもらいたいと思いまして。」

 実に白々しい。
 夏妃のアリバイを剥奪した側だと言うのに。
 これは脅されて客室のクローゼットに隠れなければならない夏妃に対するパス。
 退出する良い切っ掛け。





 クローゼット内の夏妃。


“そう。この部屋は元々、鍵が開いていたのだ。”
〝それが突然、閉まっていれば、それが誰かの関心を引いてしまうことも考えられる。”
〝……余計なことをしない方がいい…。あの男は、隠れていろとしか言っていない……。”



〝紗音にしか、秋が好きだと語ったことはない。”

 しかし、陰で誰かがそれを聞いていた可能性は否定できない。
 熊沢が陰から見ていたり、ヱリカが隣の部屋から聞き耳を立てていたりと、その手掛かりは存在している。


“秀吉さんの命と夫の命。……それを天秤に掛けることの何と罪深いことか…!!”

 ベアトの天秤の両端に、命が乗せられていることのヒント。


“秀吉は、……一人息子を失ったことを、こうしてたった一人になることで、ようやく涙を零して泣けるようになったのだ…。”
“……取り乱す絵羽を支えなければと、自分だけは気丈を装っていた。”
“しかし、彼にだって泣く権利も資格もある。”

 ヱリカが碑文を解いた時、親族会議がどうなるのか推理したり、朱志香がどういう顔をするのか推理していた。
 同じように犯人もどういう事件を起こせば、犠牲者たちはどう行動するのかを推理している。
 今回は、夏妃が退出したら、一同は個別に休みを取り、秀吉は手近な客室にやってきて誰にも邪魔されないように泣くことを推理していた。


“遺体を客間に運びたいと主張しているようだった。”
“それを南條が、警察が来るまで、現場は極力そっとしておくべきだと、なだめようとしている。”
「譲治たちの死体はそうしたらどうなったの?! 犯人にどこかへ持っていかれちゃったのよ?! 犯人は、殺すだけじゃ飽き足らず、遺体にまで何か無体なことをするつもりなのかもしれない…!! だから駄目ッ! ここへ主人をひとりぼっちで残していくなんて絶対駄目!!」

 譲治たちの遺体を隠したのは、こうやって秀吉の遺体を運び出させるため。
 そうすることで、譲治たちの遺体も、秀吉の遺体も夏妃に見せないようにした。
 実に効率の良い進め方。

 そしてヱリカも、なんだかんだ理由を付けて遺体を見ないようした。
 これで犠牲者の生死は猫箱の中。
 どちらでも言えるようにした。





 客間に全員が揃う。

「ちょうど、夏妃さんが戻って来てくれました。全員が揃ったところで、私から皆さんに、とても重要な話があります。」

 全員。
 つまり、紗音と嘉音も。
 無論、探偵のヱリカ視点ではないので、二人を同時に目撃しても、そうだとは限らないことはわかっている。
 ヱリカの前では常に片方のみいたのだろう。
 だがしかし、犯人を指摘する推理を披露する時、紗音か嘉音のどちらか一人だけを除け者にして、単独行動を許すだろうか。
 という状況証拠から、同一説は不自然なのだけど、赤とそれに準じる確定情報しか信じないのであれば、片方の目でしか見ていないのであれば、スルーされるのも致し方なし。

 他のシーンでもそれは言える。
 生存者が全員集まることは不可能、つまり、常にひとりだけアリバイがない人物がいたことになる。
 なぜ、誰も、その人物が、遺体を隠したのではないかと疑わなかったのか。

 となると、虚偽世界では、紗音か嘉音のどちらか一人だけ勤務していることになっている方が自然ではある。
 つまり、一人二役はしていないゲームということ。
 EP8のベルンのゲームもそんな感じだし。
 とは言え、そうすると、漫画版EP8のヱリカの推理が辻褄が合わなくなるんだけど……。

 ので、難しく考えず、曖昧にしておくべきかね。

 



 黄金郷のベアトとワルギリア。

「第4のゲームまでで、あなたは全てのメッセージを、彼に伝えています。………つまり戦人くんは、……いつでも、全ての真実に気付いても良いということです。………しかし、彼には甘えがある。……だから。このままゲームを幾百と続けたとしても。永遠に解けはしない。まるで青い鳥を探すかのように、永遠に彷徨い続けるだけ。」

 第4のゲームまでで、確かに全てのメッセージは揃ってたなぁ。


“そしてそれは、…………ベアトリーチェ。あなたもなのですよ。”
“あなたとて、ゲームを幾百と繰り返したとしても。あなたの望む答えになど、永遠に辿り着けるわけもない。”
“ベルンカステルは、確かにゲームを振り回すでしょう。”
“ラムダデルタもまた、傍若無人の限りを尽くして、ゲームを掻き回すに違いない。”
“それは一見、あなたと戦人くんにとって、ゲームを奪われたように見える、屈辱的なことです。”
“…………しかし。”
“今のあなたたちには、それは必要なことなのです。”
“戦人くんの甘えを断ち。あなたの迷いを、断つ。

 戦人の甘え。
 つまり読者の甘え。
 これは、答えが明かされるだろう、という甘え。

 ベアトの迷い。
 つまり執筆者である八城の迷い。
 これは、答えを闇に葬り、それでもなお闇の中に飛び込んでくれるのか、という迷い。

 ゲームが奪われるとは、別の答えが明らかなように振る舞う状況。

 つまり、ヤスの真実が明らかにされる中、19人目の真実と共に闇へと踏み出すことができるのか否か。


「ベアトリーチェ。………あなたはいつまでそうして、……生きるでもなく、死ぬでもなく。………天国に昇るでもなく、地獄に堕ちるでもなく。煉獄山の頂上でぼんやりとしているつもりなの……?」
「………………。」
「私はワルギリア。彼を煉獄山に案内し、頂上のあなたのところまで連れて来ました。……そしてあなたはベアトリーチェ。彼の手を取って天国へ昇るか、彼を抱いて地獄へ堕ちるか、選ばなくてはならない。」
“天国と地獄の狭間の、煉獄という名の葛藤は、地獄よりも辛く苛むことがあるのを知っているだろうか…?”
“地獄の門には、望みを一切捨てよと書いてある。”
“……望みを捨てた人間は、苦難を受け入れることで、諦めることもまた出来るのだ。”
“しかし、煉獄の住人には、望みがある。天国に至れるかもしれないという、捨てきれぬ望みがある。”
“だから、苛む。”
“希望という名の一本の針に勝る拷問道具は、…地獄にさえ存在しないのだから……。”

 今の状態は煉獄。
 一筋の希望がある。

 地獄は諦め。
 共に地獄に堕ちるとは、真実を諦めるということ。

 天国は希望を叶えた状態。


「飛びなさい。煉獄の崖より。……淡く脆くて下らない希望の未練ごと、パンドラの箱を開け放ってしまいなさい。怖いでしょう? 箱を開けるのは。」
“ベアトは無言だったが、………一粒の涙を浮かべながら、小さく頷いた。”
「箱の中の猫は生きているのか、死んでいるのか。それを確かめる時が、来ました。……死んでいる猫ならば、早く供養して、天へ昇ってもらいなさい。生きている猫ならば、早く餌を与えて、全ての愛情を注いであげなさい。」
「生き死にに関係なく。あなたの猫箱は、猫を永遠に冒涜しています。………あなたが開くことを恐れた箱の鍵を、あの二人が持ってきてくれましたよ。」
“ベアトリーチェ。あなたは、死ぬべき時を迎えたのです。”
“願わくば。あなたの心臓が、あなたの望んだ人の手によって、……止められることを願っています。”

 崖とはリスク、そこより飛ぶとは、今こそ賭ける時ということ。
 後戻りはできない、行き着くのは地獄か天国か。

 箱の中の猫は、ヤス。
 死んでいるなら供養し、生きているなら愛情を注ぐ。

 ベアトの死ぬ時、心臓は両方止められるのか。


 うーん、物語はどちらで終わったのだろうか。
 私は今なら完全に、二つの心臓を止め、天国の眺めを見ている感じだけど。
 EP8当時は所直微妙なんだよなぁ。
 魔法エンドの方を選んだと思うけど、手品エンドはすっきり爽快で良い、とか言っていた気がするんだよなぁ。
 「咲」はどっちの続きなんだ?
 ロゴが赤字の上に金だから、赤き真実に黄金の真実を飾り立てたもの。
 つまり、一つの結ばれているということだと思うのだが……。





 幻想大法廷。

“二つの主張がぶつかり、どちらかが淘汰される。”
“どちらかが破滅し、生きてここを後にすることは出来ない……。”

 本来その二つの主張とは、19人目の真実と、ヤスの真実。


“……つまり、本当の真実は明かされない。”
“永遠に開かれぬ猫箱の中では、全員が納得した冤罪は、真実と同じ価値を持ち得るのだ。”

 皆が信じれば、それは“真実”。
 “何か”を真実と同じ価値にするために作られた猫箱。


“……理解する。これが、六軒島の物語の作り方なのだ。”
“俺は、ワルギリアに導かれて、ベアトリーチェに出会い、……全てが見下ろせる、この山頂まで来て、ようやくこの世界の真実を理解する。”
「これが、……以前にワルギリアが話してくれたことなんだな。」
「………えぇ。そうですよ。ここでは真実など脆い。」
「両者が主張する限り、異なる真実が同時に存在できる…。」

 異なる2つの真実を主張し合い、紡がれる物語。
 絡み合った物語、その異なる真実を一望できる煉獄山。
 どんな真実を抱いて、飛ぶのか。


“座席に座る二人に振り返ると、……二人の蝋人形にだけ生気が戻る。”
“きっと、発言権がない時には、魂さえも与えられていないのだろう。”

 魂を抜かれて眠り、魂を与えられて起きる駒。
 魂が与えられているということは、愛されている証拠。


「何しろ、莫大な黄金が発見されて、どんな事件が起こってもおかしくない不気味な夜でした。……探偵あるところ事件あり。私は、何か事件が起こることを予見して、予め、アリバイを失いそうな人物に、これで封印をさせていただいたのです。」

 事件を予見できるのは、犯人だけ。
 よって、事件を予見する探偵はファンタジー。


「はい。私の耳は完璧です。戦人さんが入室後、直ちに私は部屋の壁に耳を付け、何か異常が起こらないか、監視していました。」

 19人目の日常が垣間見える……。


“……………誰もが、…絶句する………。”
“壁に耳を付けて、……そのまま朝まで、ずっとずっと戦人の部屋の様子をうかがっていたなんて……。”
“それはどんな光景だろう……。”
“夜が明けるまで、真っ暗な室内でじっと息を潜めて、いとこ部屋の壁に、じっとへばり付いている……。”
“まるで不気味な毒蜘蛛が、暗闇の部屋の中でじっと壁にへばり付いているかのよう……。”

 でもその毒蜘蛛、実は19年前から六軒島に生息していたんだよ。


「……さて次はベアトリーチェ卿のご高説の外部から至る方法です。これには正直困りました。登れそうな木もありますし、ハシゴを使う手もあるでしょう。雨どいをよじ登って2階に至ることも、不可能とは言い切れません。しかし、これをさせるわけにはいきませんっ。」

 させるわけにはいかない、ってそれはゲームマスター側の都合なんだよなぁ。


「………イカれてやがるぜ……。…客人として迎えられた家で、まだ何も起こってないのに、あの雨の中、そんなことをして回るってのか……。」
「普通のニンゲンなら、絶対にありえない不審な行為です。……ですが、彼女は魔女の駒ですから。」

 魔女の駒で納得したらファンタジー。
 ミステリーならその不審な行為を追求しなきゃ。


「………あなたという人は…、……我が右代宮家を、……何だと心得ておられるのですが…。客人として迎えた恩も忘れ…!」

 実は、六軒島のもう一人の主なんだよ。
 客人という意識なんてない、あるのは設定だけ。


「……お恥ずかしながら、すっかり熱中してしまっていたため、その間、廊下を誰かが通り抜けても、私は気付けませんでした。……探偵にあるまじき、痛恨のミスです。」
“完全なアリバイを証明するために、あらゆる工作と封印をして回った彼女が、ミステリー談義に耽り過ぎ、隙を作ってしまったと……?”
“彼女の余裕ある笑みには、言葉とは裏腹、それを恥じるものは、一切感じられない。”
“むしろ、まるで逆。”
“24時からの1時間の間、……夏妃にだけアリバイがないことを知り尽くしての、わざとの、まるで罠としか思えない…。

 それを意図した罠であることは明白。
 そして、そう意図できるのは犯人側だけ。
 一応それ以外にも、狂言殺人の協力者である可能性はあるけど、その場合、死体を見ないという、探偵視点を考慮した動きの説明が付けられない。

 つまり、探偵というファンタジーを認めるのか、それを認めずミステリーで解釈するのかの二択。


“ヱリカのアリバイは、本来ならば、まだまだ青き真実で反論できるものも多い。”
“しかし、それらはことごとく、ベルンカステルやラムダデルタによって赤き真実と認められ、一切の反論を許されなくなってしまっている……。”
「……まるで、………ヱリカの描いた筋書きを、あの魔女たちが、そうなるように、曲解してるみてぇじゃないか…。」
「そうですね。ゲームマスターのラムダデルタ卿が納得したなら、その真実の真贋は問われない。最後に残った真実に基づかれ、続く世界が紡がれる。……その最後の真実が、本当の真実とどれほど掛け離れていようとも。」

 “誰が”筋書きを描き、“誰が”それに沿って曲解したのか。
 そして、“誰が”その真実に基づいて世界を紡いでいるのか。


「ヱリカの真実は、卑劣な構築ですが正当です。魔女と結託しているとはいえ、赤き真実で認められています。つまり、嘘だけで構築したニセの真実では、断じてありません。」
「……つまり、ヱリカの真実でも、筋が通るのです。夏妃や蔵臼が犯人という真実も、まったくありえなくはありません。それが虚構であろうとも、“筋は通る”。……真実と同じ価値を持った虚構なのです。……その、二つの真実のどちらを信じるか。それは、戦人くん自身が自ら決めることです。」

 全てに筋が通る、真実と同じ価値を持つ虚構。
 二つの真実のどちらを信じるのか、それを決めねばならない。


“全員が決め付けたら、それが真実にあるのか?”
“全員が納得した嘘は、それが真実になるのか?”
“ひとりぼっちの正直者は、嘘吐きたちに罵られながら、断頭台に引き摺り出されなきゃならないのか?”
「俺は、……嫌だぜッ。……誰も夏妃伯母さんを信じないなら、むしろ俺が信じてやる…!!」
「本当の真実は、全員が納得したら決まるものじゃない! 徹底的に双方の可能性を検討して、その上で至るもんなんだ…! だからこの法廷は嘘っぱちだ! この法廷は、夏妃伯母さんを犯人だとでっち上げるためにしか存在しない!!」

 このゲームは、真実をでっち上げるために存在している。
 その上で、全員が決め付けた真実に抗い、異なる別の真実を信じることができるのかを問われている。
 あぁ、戦人と同意見だ。
 誰も信じないのなら、むしろ信じてやりたくなる。


「違う。ベアトがしているのは、抗弁。……言い訳でしかない! この法廷では、相手の主張に抗うだけじゃ戦えないんだ。だからかつての俺は、一方的にベアトにやり込められていたんだ…!」
「ヱリカに勝つのに必要なのは、ヤツの推理の粗を探すことじゃない! ヤツとは異なる、別の真実を見つけ出し、それをあのゲームの支配者、ラムダデルタに、……ヱリカの真実より正しいと認めさせることなんだ…!!」

 提示された真実に抗うには、その真実を検証しても何の意味もない。
 まったく別の真実を構築し、それを揺ぎ無く信じることだ。


「………夏妃が犯人であると、これほどの赤き真実を突きつけられても、あなたは信じないのですね?」
「あぁ……! 物事ってのは、常に信じるヤツと信じないヤツがいるべきなんだ…! 例えいくら証拠が積み重ねられようとも、誰かが潔白を信じなきゃならない! 世の中には、証拠じゃ示せない真実なんて、いくらでもあるはずなんだ。みんながそうだというから、きっとそうなんだ、なんてことを、おれは二度と受け入れたくない!!」

 誰かひとりでも反対側にいなくては、天秤にはならない。
 そうして常に天秤を用いなければ、真実は量れない。


“真実は、実際に確かめられるまで、決め付けられてはならない。”
“この法廷は、確かめることの出来ない真実を、何かひとつに決め付けようとする、悪意あるものだ。”
“俺は月の裏に文明を信じたぜ?!”
“でもそれは、小学校で馬鹿にされて囃し立てられた。だから俺は、月に文明があるなんて信じるのは、恥ずかしいことなんだと思い……、…その“信念”を捨てた。”
“俺は母さんが絵本を読んで、月の裏にはうさぎたちが住んでいるって教えてくれたから、それをずっとずっと信じって。”
“……でもみんながそれは違うというから、俺は真実を確かめるのを待たずに、その真実を捨てたんだ!”
“俺は、……証拠もないのに、信じる真実を、捨てた……!”
“そしてみんなは今、夏妃伯母さんが犯人だと信じようとしている。”
“彼女が犯人であると示す、決定的な証拠が一切ないにもかかわらず…!”
“証拠はなくても、ヱリカの言うそれがもっともらしく聞こえるから、多分、真実なのだろう……? だから、証拠がなくても夏妃伯母さんの無実を信じる“信念”を捨てるのか?!”
「誰も信じないなら、……俺が信じる…! 本当の真実は、否定と肯定の二つの目で同時に見た時にしか、浮かび上がらないと、……俺は信じる…!! ヤツらが夏妃伯母さんが犯人だといくら信じさせようとも、俺は犯人じゃないと信じるッ! それを捨てないッ!!」

 まぁ、つまりはそういうこと。
 信念を捨てるかどうか。
 それは誰かに言われてすることでも、誰かに決め付けられるものでもない。
 信じると決めたなら、それを貫くだけ。
 それができるのは、自分だけなのだから。

 そして、自分の目と他人の目で同時に見ることで、二つの真実が乗った天秤を見ることができる。
 つまり、天秤の意味を知ることができる。


「次のゲームに仕切り直され、………このゲームの夏妃は、……このカケラの夏妃はどうなるというのか……。」
「そんなの気にしてる場合じゃないでしょ?! 夏妃なんて所詮、駒よ! このゲームで取り除かれても、次のゲームにはまた登場するわ!」
「しかしお嬢様はそういうわけには参りませんぞ…。今回のゲームでベルンカステル卿の手の内はわかったはずです。それを生かし、次回のゲームで勝利を目指す方が現実的です。……ここは、ベルンカステル卿の取引に乗るのが唯一無二の上策かと…!」
「下らないプライドは捨てなさいッ!! カスパロフもディープブルーも無敗じゃないわ! 最後に勝率で勝者を決めるんでしょ?! 1つの勝負、1つの人生、1つの駒に魔女が執着したら、……死ぬわよッ?!」
「…………済まぬが、………そういうわけには行かなくてな。………誰もが違うと言っても、……自分だけは信じる男の強さと、……それを捨てなければならなかった男の悔しさを、妾は知っている…!」
「妾は夏妃を見捨てぬ! なぜか? 誰もが夏妃を疑うのなら、誰かが夏妃を信じねばならぬからだ! 真実とは、疑う者と、信じる者の狭間にこそ見つけ出せるからだ…!!」
「妾は見捨てぬぞ! 誰もが夏妃を犯人と信じるなら、それでも妾は魔女が犯人であると主張する…!! それが主張できぬなら、妾の存在価値などそれまでよ…!!」
「負けられねぇんだよ。真実ってのはさァ、誰かが否定するもんじゃねェ。」
「……自分が疑って、捨てた時に消え去るんだよォおおぉおおおおおおお!!」

 駒のヤス。
 それを見捨てるのか。
 誰もがいないというから、いないのか。
 否、信じる者が誰もいなくなった時に、いなくなるのだ。
 だから、自分だけは信じなくてはならない。
 それを疑って、捨てた時に消え去るのだから。

 そして、真実の天秤は、疑う者と、信じる者の狭間にこそ見出せる。
 その天秤こそが、真実。


“ベルンカステルの無慈悲なる冷酷の赤き刃は、夏妃を抉る……。”
“……それは、……あまりに無慈悲だ………。”
“生死不明だからこそ、……不安で潰されそうになりながらも、生存を信じることが出来た…。”
“その、……希望も、…期待も、……一片の奇跡も許さず、………叩き潰すなんて…ッ…!!”
“夫の身を案じればこそ、罠に投じた我が身だった。”
“彼女は娘と夫を失い、………右代宮家に嫁いで来て得たもの全てを、……失った。”
“いや、……それでもまだ、………ひとつだけ、残ってる。”

 これを八城になった後と解釈するなら。
 猫箱の中のヤスの生死を案じている。
 だから、生存を信じることができた。
 だからこそ、身を投じた。

 八城になる前と解釈するなら。
 ゲーム盤を作成したのは、ヤスが生死不明だから。
 だが、その希望も期待も叩き潰された。
 ヤスも世界も失い、右代宮家で得たもの全てを失った。
 それでも、一つだけ残っている。
 それはヤスとの約束。


「夏妃。金蔵があんたの心に、片翼の鷲を刻むことを、いつ許したっての? あんたの妄想の中の金蔵の言葉でしょ、それは。……本当の金蔵はね。生涯、ただの一度も、あんたを心の底から信頼したこともないし、あんたに紋章を許そうと思ったことも、ただの一度もないわ!」

 ヤスも妄想。
 つまりこれは、19人目がそういう赤き真実を構築することになったことの暗示。

 因みに、この赤き真実だが。
 夏妃の知る金蔵は、金蔵(偽)のみ。
 よって、夏妃は本当の金蔵とは一度も会ったことがない。
 本当の金蔵はとっくの昔に死んでいる。
 よって、本当の金蔵は生涯、夏妃を信頼したこともないし、紋章を許そうと思ったこともないのは当然。
 金蔵(偽)は本当は金蔵ではないので、夏妃の妄想の中の金蔵と言っても過言ではない。
 つまり、夏妃は金蔵(偽)からそうされていた可能性は否定できない。


「ぬぉおおおおおおおおおおぉおおおおおおお!! 消せぬ、消せぬぞ、我が魂は!! 夏妃が心に紋章を刻み続ける限りなッ!!」

 ヤスの魂も、八城が心に刻み続ける限り、消えない。


「本当の金蔵はそんなことを言わないわ。消えなさい。夏妃によって美化された、夏妃にとって都合のいい、夏妃の中の妄想の金蔵。」

 この赤き真実も、同様に、金蔵(偽)を否定できない。
 以降の同様の赤字も、同様に否定できない。


“夏妃の、哀しみと、……それだけではない様々な感情の入り混じった、鳴き声が、大聖堂に木霊する……。”
“……もう、夏妃は涙を止められない。”
“彼女を今日まで奮い立たせ、右代宮家の人間として、当主代行の妻として、……そして、最後の当主として耐えてきた最後の一本のか細い何かが、………千切れてしまう……。”
“もう、夏妃には、………何も残っていない。”
“夏妃にはもはや、……右代宮の姓を名乗ることさえ、……自らに許せないのだ………。”
“辛かった日々、苦々しかった日々。”
“それでも嫁いだ家のために尽くそうとした日々。”
“……そんな中にもわずかにあった、喜びの日々。”
“それらが次々と蘇っては、………消えた。”
“美しかった記憶の全ては、……もうベルンカステルの赤き真実で、……打ち砕かれてしまって、………粉々の破片になって散らばり、…ちくちくと両手いっぱいに刺さって、……悲しみの地で真っ赤に濡らす…。”
“……それが、哀しみと真実の、赤。”

 19人目の右代宮真里亞。
 もう何も残っていない。
 その名を名乗ることさえ、自らに許せないのだ。
 辛かった日々、苦々しかった日々。
 そんな中にもわずかにあった、喜びの日々。
 それらが次々と蘇っては、消えた。
 美しかった記憶の全ては、赤き真実で打ち砕かれてしまった。
 世界の、そして記憶のカケラ。
 壊れたカケラを集めてみても、手から零れる。
 構築した赤き真実が、ヤスの真実を壊す。
 自分の心を推理して欲しいという願いが、自らを傷つける。
 それが血の赤で染まった真実。





 幻想大法廷、終局。

「…………良いのだ…。この世に、……真実などない。……それは後から作られ、上書きされるのだ。本当の真実なんて、……どこにもないのだ……。」

 真実は上書きされていく。
 後世になればなるほど、どんどん上塗りされていく。
 なら本当の真実はそれらの下にあるのだ。
 塗り潰されて掻き消されるもの。
 今、消え去ろうとしているもの。
 それをどれほど気にする者がいるのか。
 EP6で嘉音が消えたところを見たが、どれだけの人が消えた嘉音を気にしたのか。
 嘉音が消えて悲しんだ者はいても、嘉音が消えないように守ろうとする者がいたかと聞かれたら、たぶん数えるほどもいなかったのではないかと。
 足掻くこともなかったのが大半で、足掻いた者もその内消え、保てた人はいたのかいないのか。
 そこからすると、本当の真実って儚いよな。
 あっという間に、掻き消えてしまうのをこの目で見てしまったもの。


「嘘だな。……そなたの約束など、妾はもう二度と信じぬぞ。」
「何? 俺がお前に、何の約束をして、何の嘘を吐いた…?」
「…………ふふふ、…くっくくくくくくく。……その、そなたの言葉で、妾は地獄を受け入れられるというもの。……ふっははははは、くっはっははははははははは…!! 殺せ、妾たちを! ベルンカステル、ラムダデルタ…!! ひゃっははははははははははははァ!!」

 紗音との約束を思い出せないということは、ヤスの真実が成立しないということ。
 謎が謎として成立せず、謎が解かれないということ。
 ヤスが生きているという希望が潰えるということ。
 一切の希望がない地獄を受け入れられるということ。


「………な……? ……本当の真実なんて、……儚いんだよ。……本当の真実なんて、存在するのか…? そしてそれは、必要なものなのか……? ……なくてもこうして、……物語は進むんだよ……。……戦人ぁ………。」

 本当の真実がなくても、人間たちが信じる他の真実が物語を紡いで行く。
 自分が信じる真実があれば、本当の真実など必要ない。
 それが人間というものだろうから。

 でも、この物語を紡いでいるのも執筆者。
 執筆者はどんな真実を基に物語を紡いでいるのか?
 そして、隠された本当の真実とは何か?




「あらゆる証拠品と証言から多角的に構築して、あなたが夫に激しい嫌悪を持っていたことは明らかです。そして逆にあなたが仰るような、やがて受け入れるようになっていったことを示す証拠は存在しません。」

 愛がなければ、愛は視えない。
 うみねこの物語も同様。
 あれだけ虐殺しているのだから愛なんてないと一見視える。
 けれど、今の私には、それすらからも愛が視える。
 証拠なんていらないよな。


「真実を語れぬ、嘘吐きニンゲンどもめッ!! 赤き真実なきニンゲンに、愛も心も真実も語る資格なんてないんです! 知ってました? 男はあなたたち女が思っているほど馬鹿ではありませんよ? 男は、女の“愛している”なんて、本気で真に受けたりなんかしませェん…!」
「……可哀想な人……。本当に人を愛したことがないのね…。」

 かつての19人目は、まさに愛することも愛されることもなかった。
 ある意味、その負の面が凝縮したのがヱリカと言えるだろう。


「……僕には、…愛憎の気持ちなんて、…わからない。」
「………あなたにもいつかわかるわ。そしてそれは生きる目的にも、殺す目的にもなりうるの。」

 こっちはさらに幼い頃の19人目。
 まだ一人の人間だと認められようとする前。
 そして確かに、生きる目的にも、殺す目的にもなった。


「夏妃さんと同じように。金蔵さんにもまったくアリバイはありません。実は今回の事件、金蔵さんにも犯行は可能なんです。」
「私はてっきり、最初からいらっしゃらない人物だと決めて掛かっていたので、今の今まですっかり失念していました。それをお詫びいたします。」

 実に白々しい。
 今回金蔵(偽)に実行犯になってもらったのに。


「近年。探偵の推理さえも筋書きに組み込まれている可能性がありますから。本当に油断ならない時代になったものです。」

 うん、組み込まれているな。
 お陰で、展開編のロジックはハチャメチャで面白くなっているけど。
 アクロバティックが過ぎるよな。


「私を犯人だと決め付けることが、あなたの真実だというのならっ。お好きになさればいいでしょう…! 私が無実であることを……、神様はきっとご存知です…! 必ずやいつか、私の無実を証明してくれます!!」
“自分か金蔵のどちらかが被らねばならぬ濡れ衣なら。……夏妃は、自らが被ることを選ぶ。”
“それが、……彼女なりの、……右代宮家の名誉の、守り方なのかもしれない。”

 “この世界”を生み出した“神”は、確かにご存知。
 無実も赤き真実で証明してくれた。
 でもこれって、夏妃を貶めるための物語であり、つまりは復讐。
 ……一見そうで、確かにそうで、最初はそうだったに違いないんだけど。
 全部通せば、逆説的に夏妃の高潔さを証明する物語になっている。
 つまり、最終的には、夏妃の高潔さを理解するための物語として生み出されているのだ。

 愛憎。そしてその変化の過程。
 夏妃の日記と同じだ。
 負の感情しか書かれていないのだけど。
 その記述がだんだん少なくなることで、その感情がだんだんなくなっていくのがわかる。
 書かれていないのに、それがわかる。
 証拠はないけど、理解できる。
 愛がなければ、視えない。


“自分が犯人でないという一時の真実を得るために、金蔵の名誉を売り払うことを、毅然と彼女は拒否する……。”

 19人目の右代宮真里亞の、一時の真実を得るために、ヤスの名誉を売り払うことはできなかった。


「金蔵は24時から朝まで、ずっと同じ部屋に滞在したわ。」

 この赤字。
 本当の金蔵のことなら、死者なので葬られた場所にすっといたことになる。
 それが駄目なら、金蔵の名は金蔵(偽)が書斎に残してきた。
 つまり、夏妃に己が不在の間、書斎にいたことにせよと命じていた。
 よって、金蔵の名は書斎に、24時から朝まで滞在していた。
 とか。


「………これより金蔵という言葉を“生きている金蔵”という意味で使うわ。」

 皆が把握している金蔵と、本物の金蔵は違う。
 つまり、本物の金蔵が生きていようと、六軒島には存在しない。
 金蔵(偽)は、金蔵ではないにもかかわらず、皆に金蔵だと把握されることで“存在しない金蔵”として存在している。
 よって、金蔵の名は書斎に残しながら、“存在しない”ままに自由に行動できる。

 まぁ、そもそも“金蔵が死亡していて存在しない”と皆が認めたから、それに基づき新しい物語が紡がれた。
 それがどれほど、真実と異なっていようとも。
 つまり、金蔵が死んでいるとされるこのEP5は、金蔵が死亡しているとする虚偽の世界を描いたものなのだ。
 ただし、だからと言って、本当の真実を全て覆い隠すことは不可能なのだけど。





 19年前の復讐。

“転落したというより、……まるで、何もない宙に、二人が音も無く飲み込まれて消えたようにさえ感じたのです。”
“だから私は、二人が岩浜に落下した音さえ聞いていません。”
“いえ、きっと聞いているのです。”
“でも、消えたと思い込みたかったから、………その聞いた音を、きっと記憶から消し去ってしまったのです…。”

「私は一瞬、…これが夢だと信じました。……あの高さですから、ちょっと身を乗り出したくらいでは、眼下の二人は見えません。だから、二人が落ちたことさえ、……ほんの数秒のことさえ、現実のことなのかわからなくて…。」

 落下音を聞いていない。
 死んだ二人を見ていない。
 これだけで、二人が死んだとは限らないことはわかる。

 例えば、金蔵がその行動を予測、推理し、予めマットを敷いていた、とか。
 その後の探索では、源治にでもそこへ行かせて確認し、死んだことにした。
 後、落とされた使用人と、その家族に金でも握らせて言い含めればいい。
 死んだことにされた使用人は、九羽鳥庵で赤子の世話でもさせれば一石二鳥。

 あと、マットがあろうとかなりの高さから赤子が落ちて無事かわからないので、安全策を取るなら、やはり赤子の偽物と直前に摩り替えておくのが良いと思う。





 お茶会。

「ありがとう、ヱリカ。……あなたのお陰で私は、病の辛さを当分の間、忘れることができそうだわ……。くすくすくす、うっふふふふふふはっはははははははははは! あなたは最高だわ。私の駒、私の分身、……そして私の可愛い娘。」
「も、……もったいないお言葉です…! 我が主…!!」

 主は退屈を癒すことを目的に駒を作り、駒に物語を紡がせる。
 灰色の世界を、鮮やかに修飾させるために。
 私の駒、私の分身、私の可愛い娘、ベアトリーチェ。

 ヱリカが夏妃犯人説を基に新しい物語を紡ぐように、ベアトも何らかの真実を基に物語を紡ぐ駒であるというのは、EP5と6で示されている。


“……駒にとって、その活躍を主に認められる以上の喜びは存在しないのだから。”

 駒の喜び、ベアトの喜び。
 まさしくそのためにベアトは頑張っている。





 裏お茶会。

“……だからもう。……戦人が戻ってくることは、……ない…。”
“だからもう。………黄金の魔女、ベアトリーチェには。”
“存在する理由が、………なくなった…………。”

 ヤスの真実は、戦人に推理されるために作られた。
 それを果たすための駒がベアト。
 よって、戦人が推理できなくなったら、存在する理由がなくなる。

 現実の戦人は間に合わなかった。
 だから、それを防ぐために猫箱に閉じ込めた。
 そして12年後、戦人の代わりに推理する読者を探すためにメッセージボトル及び偽書を流し、ゲームを再開した。
 戦人が間に合わずに死んだ猫箱の中の猫を蘇らせるために。
 猫箱の中なら、死は確定しないから。


「物語を、……遡り給え。……今の汝には、真実のか弱い光を見逃さぬ眼が、与えられていると知れ。」

 真実のか弱い光は、凄いいっぱい散りばめられていた。
 戦人はホワイダニットには強いよな。
 私は心の方面は苦手だから大変だったぞ。
 「咲」発売前にようやくギリギリと言ったところ。


“その眩い黄金の光は、………赤き太刀の色を、……黄金に染めていく……。”

 黄金の真実は、赤き真実を上塗りするもの。
 即ち、本当の真実に飾り立てられる、真実と価値を同じくする幻想。





「証拠提示。右代宮金蔵と識別可能な遺体を提示する…!!」

 この赤字は、焼死体の多指症から金蔵だと識別可能というだけで、その死体が本当の金蔵であることを保証するものではない。


「この死体が右代宮金蔵の死体であると保証する…!!」

 黄金の真実。
 それは、真実に修飾された、真実と同等の価値がある虚実。
 つまり、“右代宮金蔵と識別可能な遺体”を“金蔵の死体であると保証する”で飾り立てたわけだ。
 そしてそれは逆説的に、その死体が金蔵ではないという明白な事実を示している。


「……黄金の真実。赤き真実とは異なる方法によって紡がれる神なる真実。……その力は赤き真実と同等デス。……時に劣るでショウ。しかし、時に勝ル!!」

 神が紡ぐ、赤き真実とは異なるもう一つの真実。
 赤き真実と価値を同じくする虚偽。
 相反しながらも、この世界では同時に存在できる。
 天秤の傾きによって、時に劣り、時に勝る。
 今回のゲームにおいては、金蔵の死亡をほぼ全てのプレイヤーが信じていたから、絶大な力を振るった。


「俺は今回のゲームで! 碑文の謎の仕掛けを解いた時。祖父さまを目撃している。……すでに赤で示されている通り、祖父さまは存在しない。その目撃は不可能だ! よって俺の視点に客観性がないことはすでに示されているッ!!」

 これは全て赤字。
 まず戦人は、金蔵を目撃している。
 戦人が金蔵だと把握している人物を目撃した。

 続いて、金蔵は存在しないので、その目撃は不可能。
 本物の金蔵は存在しないので、目撃は不可能。

 目撃と目撃不可という矛盾した赤き真実を同時に成立させるためには、それぞれ異なる金蔵について語られていなければ不可能な状態だ。

 ついでに、戦人視点は、主観なので、客観性など元からない。
 よって、第5のゲームで戦人が探偵であっても構わないと思う。


「………あなたのような男が世界にいてくれたナラ。どのような傲慢からも、か弱き真実を守ってくれたに違いナイ。」
「もっともらしい一つの真実が、か弱き真実たちを駆逐し、唯一の真実であると語る横暴から、……本当の真実を守ってくれたに違いナイ…!!」

 全員が一致した真実の横暴より、ひとりぼっちの真実を、真実たちを守ってくれる者。
 それが奇跡だよな。


「……あんたのプライドなんて知ったことじゃないわ。いつまでその無様な姿を晒す気なの。……私と同じ青い髪を許された分身が、……いつまでそこで磔になっているつもり……? 私自らがやはり降臨しなきゃ駄目なのかしら……。」
「………やはり駒なんていらないわ。あぁ、面倒臭い面倒臭い七面倒臭い…。駒なんていらないわ、捨ててしまおう、あぁ、残念無念失望絶望期待外れの的外れ…!! ……早くしなさいよ、屑がッ!! お前のそのみっともない推理を修正しろって言ってんでしょうッ?!?!」

 主がすることを、駒が代わりにする。
 その駒の代わりを、そのまた駒が代わりにする。
 二度手間三度手間。まぁ、面倒臭いはな。
 とは言え、退屈による死を回避するための、多様性による生存戦略。
 それが駒や家具だから。


「あぁ、そうだ。俺の真実に関係なく、お前の真実も同時に存在する。……それが、この世界だ。誰にも否定できないなら、いくつでも、どんなに相互が矛盾しても、それらの真実は同時に存在できる。ここでは、想像の数だけ真実があっていいんだ。それを、誰も一方的に否定してはならない…!!」

 駒の数だけ真実が並列し、そしていくらでも駒を追加できる。
 それがこの世界。


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フラット・ホームズ

Author:フラット・ホームズ
「うみねこのなく頃に」の某公式サイトで推理を投稿していた。
その時使っていた名前は察してください。
スタイルは、アンチミステリーをチェス盤で引っ繰り返す、というもの。
キコニアでは、世界を箱庭に見立て、そこにどんな駒を置いたのか、それらを動かして最終的にどういう形に持って行くのか、的な感じのを主にやっている。

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